本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

第42回・飯田橋読書会の記録:『世界史の誕生』(岡田英弘著)

歴史とはなんだろうか?歴史とは、過去に記述された文献や、人類が作り上げた物体の蓄積である。そして歴史学とは、これらを採集・解釈・再構成し、いまに生きる私たちの知恵として役立てるための学問である。また、歴史にはエンタテイメントの要素もある。…

『昨日の世界』を読了しました ~3つの時代を生き抜いたウィーン作家の壮大な自伝~

シュテファン・ツヴァイク(1881~1942年)の自伝、『昨日の世界』を読み終えた。定例読書会の課題図書として、私が初めて選書した作品。選書しておいて、647ページの大作を手にして一瞬面くらったが、私にとって非常に興味深い内容で、一気に読むことができ…

小さな創造と集合知。これらが動き出し、イノベーションのタネを生む

日本が年々国際競争力を失う中、たびたび「イノベーション」という言葉が引き合いに出される。 先日とあるセミナーに参加し、印象深い公式をお見せいただいた。それは クリエイション × オペレーション = イノベーション である。いまの日本人は、アイデア…

第41回・飯田橋読書会の記録:『舞姫・阿部一族』(森鴎外著)

森鴎外と聞くと、あまりにも古い作家だったり、国語の教科書を思い出したりなどと、なんだか遠い、お勉強の世界にある作家だというイメージを持つ人が少なくないかもしれない。 今回取り上げる『舞姫・阿部一族』は、明治(とはいえ生まれは幕末)の文豪、森…

読みました:『はてしない物語』(ミヒャエル・エンデ) ~大人も楽しめる政治メタファー・ファンタジー~

これはおもしろい。大作ファンタジー。エンデの世界観は壮大で好感が持てる。作品の使命とは、世界の可視化である。しかもエンデの場合は児童文学という領域で、大人が作り上げている世界を可視化している。 『モモ』が経済学の物語であるとしたら、『はてし…

第1版から11年を経て、『ビジネスサイトを作って学ぶ WordPressの教科書 Ver.6.x対応版』が発刊

先日、当社株式会社ツークンフト・ワークスが企画と制作を担当した、『ビジネスサイトを作って学ぶ WordPressの教科書 Ver.6.x対応版』が発刊されました。 本作の第1版が発刊されたのは2012年3月。あれから11年の月日が流れ、当時としては考えづらかった、簡…

『DXビジネスモデル』(小野塚征志 著、インプレス刊)の重版見本が到着

『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』(小野塚征志 著、インプレス刊)の重版見本が届きました。 2022年5月発刊以来重版が続いており、「続々重版!」の帯コピーが冠されています。 「DX」(デジタルトランスフォーメーション)を知る…

10年目に突入。飯田橋読書会の軌跡(2014年~2023年:第1回~第41回)をまとめました

飯田橋読書会を開催して今年で10年目を迎え、41回を数えることとなりました。読んだ作品は一冊一冊、いずれも印象深く、この読書会の力を再確認する、忘れがたいものばかりでした。これらを以下、リストアップしてました。読書会であと何冊読めるのか、とて…

読みました:『女の一生』(アルトゥール・シュニッツラー著) ~時代に流されながら生きる、一人生の縮図~

ウィーン世紀末文学の大御所、アルトゥール・シュニッツラーの最晩年の小説を読んだ。 この方の名前は知らずにも、スタンリー・キューブリックの映画「アイズ・ワイド・シャット」(『夢小説』)の原作者であるといえば、すぐにわかるだろう。 そして『女の…

読みました:『ハプスブルク帝国』(岩崎周一 著) ~共産主義以前の、東欧史の本質がわかる物語~

大変興味深く拝読した。30年前に読んでおいたら、いまの世界の見方が大きく変わっただろう。「なんでいままでハプスブルク帝国を知ろうとしなかったのだ!」と、長年のもやもやが解かれた印象が、今回の読後感だった。 東欧の本質はソビエトではなくハプスブ…

異端映像作家の全作品を通した正当な人物史:『パゾリーニ』(四方田犬彦著、作品社刊)

1088ページという長尺でありながらも、作品を通して人間パゾリーニに迫るという一貫した視点がブレない名作。 パゾリーニという名前を聞いただけでも、「ちょっとなぁ……」となる人は少なくない。エロ、グロ、汚い……、という単語でひとくくりに片づけられるこ…

第40回・飯田橋読書会の記録:『近代日本の陽明学』(小島毅著)

科学といえば森羅万象を仮説検証し再現性のある結果を得る学問で、哲学といえば人間が感知したことを言語化して検討、共有する学問。歴史学といえば過去に起こった事柄を文献や遺物で比較検証、解釈する学問。では、今回取り上げる「陽明学」とは、どんな学…

創業6年目で考えた本と「本」のこと

私が経営する株式会社ツークンフト・ワークスは、1月11日をもって創業6年目に突入した。出版プロデュース事業を起業して丸5年を経て、従業員時代には体験したことのないさまざまな風景を見ることができた。道半ばとはいえ、ここまで来ることができたのは、ひ…

組織と自律、思考停止を考える

DXという単語に伴い、近ごろはリスキリングという言葉もよく耳にする。企業がいままでの組織人を、変化の激しい世の中に対応できる新しい組織人へと教育する。これが、リスキリングと呼ばれている。 DXもリスキリングも、とくに日本の大企業においては、成功…

当社株式会社ツークンフト・ワークスは創業6年目を迎えることができました。

本日、2023年1月11日をもちまして、当社株式会社ツークンフト・ワークスは創業6年目を迎えることができました。ここまで来られたのは、会社や私とつながりをいただいた皆様のお力にほかなりません。この場をもって、深く感謝いたします。足踏みを続ける出版…

未来の天才プログラマーが『MQL4プログラミング入門』に熱心に取り組む ~フリースクール「にじLabo」にて~

登校支援型フリースクール「にじLabo」に、当方から『MQL4プログラミング入門』と『ゼロから理解するITテクノロジー図鑑』を献本させていただきました。同校の「孤立してしまった子どもたちの“自律”に向けたお手伝い」というメインテーマに共鳴しました。代…

『MQL4プログラミング入門 ゼロからはじめる自動取引システム』が発刊されました

新刊『MQL4プログラミング入門 ゼロからはじめる自動取引システム』の見本が届きました。そして書店でも配本されました。メンサ会員でプログラマーの木村聡さんによる著作です。株式などの自動取引プログラムを書くためのノウハウが詰まった内容です。プロの…

「複雑」とはなにか?

2021年7月刊の『DXスタートアップ革命』のプロデュースを手掛けた際には「DXという言葉は年内には旬でなくなる」と言われて一年を経たが、今年5月に刊行された『DXビジネスモデル』は3刷となり、発売後4か月で累計1万部を超えた。「DX」というキーワードへの…

第39回・飯田橋読書会の記録:『巨匠とマルガリータ』(ミハイル・ブルガーコフ著) ~スターリン時代のウクライナ人作家による幻想文学を考える~

第39回を迎えた読書会、現代ウクライナ文学の名作『巨匠とマルガリータ』(ミハイル・ブルガーコフ著)を取り上げた。 2月からのロシア・ウクライナ戦争という時流を鑑み、本作を取り上げることにした。その民族のメンタリティを知るためには文学がいちばん…

新刊『落葉』(高嶋哲夫著)を読みました

『落葉』(高嶋哲夫著)を拝読させていただきました。「パーキンソン病+ネットカルチャー+エンタテイメント+スタートアップ(ビジョンハッカー)」といった、高嶋哲夫さんの鋭い視点から「いま」が切り出されている興味深い作品です。 パーキンソン病とい…

悪の極限から見えてきた平和と美徳:『悪徳の栄え』(マルキ・ド・サド 著、澁澤龍彦 訳)

正編が黒、続編が赤という装幀が素晴らしい。マルキ・ド・サドの代表作。怪女ジュリエットの悪徳三昧の半生が描かれるアンチ・ユートピア小説。 正編では大臣に囲われる娼婦としてジュリエットが登場。大臣の権力の庇護下で悪徳の限りをつくす。大臣は慈善施…

Web3書籍回収の悲報から見た「情報を取りに行く」ということ

先日、Web3を扱った書籍が版元により回収されたという出版事故がネットを騒がせた。IT書籍の老舗版元での出来事であり、同業という意味でもまったくの他人事ではない。この話には愕然としてしまった。同時に、身を引き締める思いである。サイトには誤記個所…

編集者、その愛すべき人種たちの未来

本づくりに携わる「編集者」という言葉の意味は、時代とともに大きく変わってきている。そのことを最近強く感じるようになってきた。明治の文豪幸田露伴を支えた小林勇は、作家の黒子として創作に寄り添い、作家の臨終にまで立ち会った編集者だった。昭和の…

第38回・飯田橋読書会の記録:『新しい世界の資源地図:エネルギー・気候変動・国家の衝突』(ダニエル・ヤーギン 著)

「地政学」という言葉に皆さんはどのような印象を持つだろうか。「学」と言われながらも大学で正式に学問されていない分野である。日本では太平洋戦争敗戦後、国土侵略の思想原理であるとしてマッカーサーにより禁止されていた、など。 今回は、2月に勃発し…

発刊後4日で早期重版決定。『事業分析・データ設計のためのモデル作成技術入門』(佐藤 正美著)

当社プロデュースの以下書籍、『DXビジネスモデル』に次ぐ2冊目の重版が決まりました。 発刊後4日での重版決定という、異例の速さでした。 www.amazon.co.jp お支えいただいた読者並びに著者様、TMの会の方々、版元ご担当・関係者、書店・取次様など、全関係…

『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』の重版決定

このたび、当社でプロデュースを手掛けさせていただいた、 『DXビジネスモデル 80事例に学ぶ利益を生み出す攻めの戦略』 の重版が決定いたしました。 著者の小野塚征志さん並びに推薦文をいただいた守屋実さん、お買い上げいただいた読者の皆様、版元各ご担…

『ゼロから理解するITテクノロジー図鑑』のハングル版見本が到着

『ゼロから理解するITテクノロジー図鑑』のハングル版の見本が到着いたしました。 台湾や香港、マカオで出た中国語繁体字版と同様、版型はB5。 監修させていただいた、海を越えた2冊目です。大陸で戦争が起こってしまったこの時代、NATOとの緊張も深まる分断…

日本が第1位を獲得。観光魅了度ランキングが意味する、コンテンツの力

先日、世界経済フォーラムが発表した世界の観光魅了度ランキングで、日本が初の第1位を獲得した。これは素晴らしいと思いつつ報道を聞いていた。そして、昨年の第1位はスペイン(今年は第3位)だという。何百年も前の世界大国であったスペインがいまは観光小…

『DXビジネスモデル』の紹介記事を寄稿させていただきました

サイト「経営者テラス」に、当方が運営する株式会社ツークンフト・ワークスがプロデュースを担当させていただいた『DXビジネスモデル』(小野塚征志著)の以下紹介記事を寄稿させていただきました。keieishaterrace.jp 本作の編集制作時つねに念頭に置いてい…

20年以上前に開発された非接触決済システムの化石「The Java Ring」

サンフランシスコのモスコーニセンターで1998年に開かれた「JavaOne」にて、当時の上司が取材に行った際手土産に買ってきてくれた歴史的なお品物が「The Java Ring」である。 この指輪の中にはJavaでセキュリティが確保された接触型の個人情報(64ビットのID…