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情熱と実績から見る、詐欺師と英雄の境界線:『ナポレオン言行録』(オクターヴ・オブリ 著)

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ナポレオンとは毀誉褒貶に満ちた不思議な男だ。
男の中の男とか、英雄中の英雄、軍事の天才として、歴史の中に強く記述されている。
フランス革命後、封建制からの解放を旗印にヨーロッパ中を戦渦に巻き込んだ恐ろしい人物ではあるが、一方で攻め込まれたロシアでは市民が歓喜して迎えていたり、ゲーテは同朋民族が何万人も死んでいるのに賞賛していたり、評価が真っ二つに分かれるとは、まさにナポレオンをおいてほかにはない。

いったいこの人物は世界をどう見ていたのだろうか。戦争の口実としてしばしば口にされる、「遅れた人たちを解放してやる」という熱意に燃えていたのだろうか。
この英雄が島流しにあったセントヘレナ島を調べてみると、アフリカ大陸から実に2,800kmも離れている。日本での北端宗谷岬から与那国島までにに相当する距離。八丈島佐渡島の島流しとはまったく比べものにならないスケールだ。

敗戦国の司令官だから一般的には死刑だが、ナポレオンは、「自分には言葉として歴史を残す使命があり、自らイギリス人の捕虜になって生き延びることを選択した」、と語っている通り、負け惜しみとか泣き言の一切ない(女性関係以外は)、まことに英雄らしき英雄である。

彼が晩年に残した言葉がある。

「歴史家に勇気があるならば、当然認められるべくして認められなかった私の何らかの功績を改めて認め、歴史における私の役割を正しく評価せずにはいられないであろう。しかもその歴史家の仕事は容易であろう、というのは諸々の事実が語っているからである。諸々の事実が太陽のように輝いているからである。」

「俺が歴史だぜ!」といわんばかりの言葉だ。
この語り口で戦線布告したり、自分の辞書に不可能という文字はないと部下をぐいぐい引っ張っていったわけだから、人間の持つ情熱-言葉-実績は、いつの時代にも紐ついているということを証明している。

詐欺師と英雄の境目。それは、その人の言葉に実績があるか否かに、他ならない。

三津田治夫