本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

セミナー・レポート:5月11日(土)開催、「人にしっかりと伝わるアクティブ・ライティング入門」(後編)

セミナー・レポート後編では、Web記事の実例分析やワークショップを通して示された、実践メソッドをご紹介しよう。

「書く」技術を上げるポイントをまとめた三津田治夫講師作成の特別冊子も配布された。そばに置いて、繰り返し利用したい。

伝えるための媒体の選び方
「書く」メディアには、書籍、雑誌、POD(プリント・オンデマンド、オンデマンド出版)、電子書籍、Webサイト、ブログ、SNSなどがあり、発信難易度や発信スピード感、そして受け手の信頼性・信憑性に違いがある

たとえば、書籍は、発信難易度が高くて発信スピードは遅く、受け手の信頼性・信ぴょう性は高い。一方、SNSは、発信スピードが高くて発信難易度は低いが、受け手の信頼性・信ぴょう性は低い。いまは1部から出版できるオンデマンド出版があるほか、発信が簡単なSNSから火がついて派生することもある時代だ。メディアの特性を選んで書こう。

セミナー後半では、アクティブ・ライティングのポイントが、実例をあげてわかりやすく解説された f:id:tech-dialoge:20180525183541j:plain

企画から原稿完成までの7ステップ
ステップ1:企画を作る

企画は、与えたいものと世の中のニーズのすり合わせだ(セミナーレポート前編参照)。タイトル・テーマ・読み手の想定(年齢層・職業・ペルソナ)をして、アウトラインを書き出しながら考えるのがコツだ。思いついたことは、常々クラウド上のメモなどに残しておくようにするといい。

ステップ2:企画を人に見せる

周囲の人に企画を見せたり、Webなどのオンラインで発表して反応を見よう。見せる相手の人選は重要。ブログやSNSも利用して、信用できる人、好意で読んでくれる人を探そう。講師自身も、フェイスブックに短く書き、反応がよかったらブログに書くというようなことをしている。

ステップ3:執筆のスタイルを決める

単独で書くか、複数で書く共著にするかを決める。ただし、人数が多くなると管理が大変であり、取りまとめ役を置く必要がある。

文章を構造的に捉え、このステップを踏めば、伝わる文章が書ける!f:id:tech-dialoge:20180525152339j:plain

ステップ4:執筆時の作業内容の洗い出し

調査・取材→執筆→実例や画像など掲載用サンプルの作成→図表の作成→校正→推敲の手順がある。時間が足らず、校正や推敲はスキップされることがあるが、実は、ライティングと同じくらいの時間が必要だ。この有無が原稿のクオリティを決めるので、絶対に削らないこと。どうしても時間が足らないときは、レビューを飛ばそう。

ステップ5:原稿のレビューを考慮

知人や関係者にレビュー(下読み)を依頼して原稿の精度を上げる。SNSで呼びかけてもいい。共著の場合は、回し読みも有効だ。有名な著者さんもされており、著書の奥付に名前が記されていることもある。ライティングは1人でやっているように見えるが、実はそうではない。

ステップ6:執筆期間を見積もり、完成予定を作成

試し書きをしながら執筆速度を計測しよう。協業の場合は、できあがった予定を、外部と共有することも忘れずに。一般的な書籍執筆は、3か月~1年を要する。

ステップ7:執筆を開始し、完成原稿をアップ

ステップ4「推敲」やステップ6「完成予定」などを考慮しながら原稿を書く。図面を引いたら、一心不乱にひたすら書く文章の基本構造は、章→節→項→目の入れ子構造になっている。起承転結など物語構成を考えたり、身近なところから書き始めて、最後は視野を世界に広げるなどすると書きやすい。書けないのは、図面がないからだ。

書いているとあれもこれもと迷ってしまいがちだが、文章は書けば書くほど伝わるというのは勘違いだ。

推敲では、できるだけノイズを削り、読み手をハッピーにする文章に仕上げよう。感謝のメールがたくさん来ているなどとイメージしながら進めるといい。字面にも注目。漢字を減らして読みやすくすることも必要だ。

執筆とレビューが終わったら、アップ(入稿)する。

Webの「いいね!」機能で読まれるコツを見つける
ウェブではSNS機能が付いているものが多く、「いいね!」の数で人気のある記事かどうかがわかる。これを参考に、読まれる記事を分析してみるのもいい。文章だけでなく、コンテンツ全体を見ると、見出しや写真の重要さも発見できるだろう。

タイトルは簡潔であるほどいい。1画面に1~2本の見出しは欲しい。結論が分からないからこそ、読んでみたいと思わせる見出しもあるが、基本的には、文章の全貌がわかる見出しが望ましい。文章の最後の要約を使うのもコツだ。漢字が少なく、センテンスが短いと読みやすい。

ただし、お金を払って「いいね!」を獲得している場合もあるので考慮を。

Webの分析、推敲のビフォア・アフター、見出しをつけるワークで、実践メソッドを体感f:id:tech-dialoge:20180525152504j:plain

自分の存在意義を問いながら書こう
「書く」きっかけは、認められたい、売りたいという個人的、即物的欲求でよい。目標があれば書き進められるし、書き進めるうちに、即物的欲求が、昇華していく。文章がうまければ読まれるとは限らない。最も重要なのは、あなたが与えたい内容だ。どう相手をハッピーにさせるか、どう共有するかが重要なのだ。

『ティール組織』という本が売れている。自分の存在意義を問いながら仕事をすることがビジネスに成功をもたらすと説いているが、「書く」ことも同じ。与えたいことを徹底的に考えることや主体性・熱意が大切なのだ。自発的に「書く」機会を作ることは、とてもいいことだと思う。

積極的な「書く」がポジティブな「明日」を作る
ノーベル賞を受賞したガルシア・マルケスが『物語の作り方』で語っている。「理想を高く掲げて、一歩でも近づこうとすること。他人の意見に耳を傾けて真剣に考える勇気を持たなくてはいけない。そこから一歩踏み出せば、自分たちがいいと思っているものが本当にいいものかどうか確かめられるようになる」と。「書く」ことを通じてそれを実践して欲しい。積極的な「書く」が、コミュニティの活性化、顧客や仲間との関係の深まり、安定した収入などポジティブな循環を生む。ひいては素晴らしい明日を作るだろう。

前田 真理