本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

コラム/エッセイ

DX時代のITエンジニアのための、キャリアづくりの考えるヒント ~要素技術とエンジニアリングの間に見えたもの~

先日、某IT人材企業の代表にお会いし、業界のことやエンジニアのキャリアのあり方などについて話を伺い、さまざまなキーワードを手にした。その中でもとくに、以下3つが印象に残った。 ・要素技術は時代とともに消える・エンジニアリングそのものは消えない…

DXと問い、そしてアジャイル

先日、農林水産省が「「農業DX構想」の取りまとめについて」を発表した。「データ駆動型の農業経営により消費者ニーズに的確に対応した価値を創造・提供する農業(FaaS(Farming as a Service))への変革を進める」とし、日本古来の仕事である農業の世界に…

私たちの生活を担う、「知足」の感性磨き

先日、作家の髙坂勝氏のWeb講演に参加してきた。同氏は千葉県匝瑳(そうさ)市で有機農業や再生可能エネルギーの普及にライフワークとして取り組まれている方である。延べ3時間におよぶスピーチと質疑応答は、まだまだ時間が足りないほどの、あっという間の…

編集、この愛すべき仕事(後編)

(前編からの続き) 編集者のやりがいざっと、編集者の仕事の流れを見てきた。編集という仕事を選んだ限り、やはり、やりがいは欲しい。どんな仕事でも、給料をもらったり、売り上げがあがったときは、うれしく、ありがたい。そして、この仕事をやっていて良…

人と人とをつなぐ、本のチカラ

2014年1月25日に『トランスクリティーク』(柄谷行人 著)にてはじまった読書会、11月7日をもって、のべで32回の開催となった。そして次回から8年目を迎える。先日、その忘年会を開催した。 メンバーの増加やオフラインでの開催ができなくなるなど紆余曲折を…

編集、この愛すべき仕事(前編)

私は企業のシステムエンジニアとしての新入時代4年間を除いて、25年間編集者である。この間、本ばかりを作っていた。起業してからも、出版プロデュースを軸に、編集の仕事を手掛けている。なぜか知らないが、編集者になりたいという願望が強かった。業種を変…

「本」とはなにか?

最近よく「「本」とはなにか?」という議論を耳にします。デジタル社会で情報優位が高度化する中、ますます「本」という物体に人の目が向けられているのではないでしょうか。近年アナログガジェットとしての文具が見直されているのも、この流れに近い感じが…

大人の夏休み一泊体験。つくばで味わった無邪気な夏の写真日記

8月某日、今後の地方分散社会を視野に入れ、東京近郊地方での生活とはどういうものかを知るため、一泊でつくばの田舎暮らし体験を試みた。 体験取材ということで一日目はいろいろと考えながら行動していたが、二日目は「楽しい」という純粋な体験・印象ばか…

東京ステーションギャラリーにてバウハウスの歴史を観覧。付録:オスカー・シュレンマーのエッセイ『人間と芸術像』

「開校100年 きたれ、バウハウス ―造形教育の基礎―」と題し、東京ステーションギャラリーで展覧会が開催された。9月6日(日)の最終日もそろそろ近づいてきたので、猛暑日、足を運んでみた。 ◎出口には実際に座れるマルセル・ブロイアーのパイプ椅子があった…

バウハウス ~引き継がれるべき、一つの歴史が終わったこと~

32年間、毎年必ずクリスマスカードの交換をしていたドイツの友人のコリンナから、昨年はカードが届かなかった。非常に筆まめな方で、なにかあったのだろうか、暑中お見舞いでも出して様子を伺おうかと考えていたら、あまりパソコンを使わない彼女から珍しく…

セミナー・レポート:危機から見えた、新しい日本を考える ~高嶋哲夫氏によるオンライン・セミナーを開催~

◎オンライン・セミナーの模様 7月21日(火)、作家の高嶋哲夫氏をお招きし、「アフター・コロナを考える「新しい日本の形、新しい日本の創造」」と題し、本とITを研究する会主催のオンライン・セミナーを64人で開催した。高嶋哲夫氏は、『首都感染』(講談社…

本を読むにもノウハウがある ~あなたの読書を「最適化」しよう~

人は本を読む必要があるのだろうか?教養や趣味、娯楽など、読書にはいろいろなゴールがある。今回は、編集者として、また、一人の本好きとして、「情報収集のため」と「知識のため」をゴールに、「本の読み方」のお話をお届けしたい。 そもそも「情報収集」…

テレワークが加速させる、地方分権社会の形づくり

新型コロナウイルスの影響でテレワークを導入した企業が急激に増えた。 これにより、対面でも電話でもない、独特のコミュニケーション形態を味わってしまった人たちが急増した。 私もたびたびオンライン会議やWebセミナーを実施したが、なんともいえない距離…

コロナと「変わる」ということ

新型コロナウイルスの到来で「働き方や生き方インフラがガラリと変わるされる」と言われている。 この、変わる、とはなにか?すなわち「革命」である。日本人が直近で遭遇した革命は150年以上前にさかのぼる。明治維新(Meiji restoration and "revolution"…

『紅い砂』(高嶋哲夫 著)を読んで ~社会変革と「壁」そして自由の本質(後編)~

(前編から続く) 警察が強権をふるう監視社会当時の東ドイツでは西ドイツのテレビ放送を傍受することができた。これにより東ドイツの人たちも西ドイツの情報を持っていたが、傍受した内容を学校や町中などで口にすると、市民に紛れた秘密警察(ゲハイムディ…

『紅い砂』(高嶋哲夫 著)を読んで ~社会変革と「壁」そして自由の本質(前編)~

『紅い砂』(高嶋哲夫 著、幻冬舎刊)は、元米兵ジャディスが率いる革命軍が内戦で中米コルドバの政権を奪取し、民主主義国家を樹立する、という物語だ。独裁政治と薬物による暗黒経済が支配するコルドバの国民は、自由を得ようと、メキシコとの間に米国が築…

いま考える、生存のインフラ「文化」について

見えない敵、新型コロナウイルスは、私たちの生活に覆いかぶさるよう日々情報を更新している。さまざまな意味で、破壊的である。先日は日本赤十字社が、ウイルスの次に来る脅威は「情報が与える恐怖」という啓蒙CMを流しはじめた。新型コロナウイルスの感染…

自由で健康な心身で乗り越える、「情報」との戦い

一次情報にあたることで、情報としての毒性から逃れる新型コロナウイルスを書くことは、無闇に読む人の恐怖心を煽るというリスクがある。しかし恐怖心とは、「自分の力でコントロールできる」と気付くことにより、低減、もしくは消滅する。ここでは、「自分…

本当の意味での、本に向き合い自分に向き合う時代の到来

書籍の販売数は年々減少し、雑誌はさらに減少という状況を示す「出版不況」という言葉。出版業界にいる人が耳にタコができるほど聞いているお題目である。 最近は、雑誌が読まれる機会が本当に減ってきた。かつては雑誌流通が出版流通を下支えし、これに乗っ…

人と自然にまつわるさまざまな情報が集まる、川の土手

川の土手に出ると、人と自然にまつわるいろいろな情報が集まる。とくにすれ違う人とのあいさつを通した相手の表情や視線は、多くを物語っている。土曜は曇り空のせいもあってか、元気のない雰囲気だった。これは少なからず、新型コロナウイルスの影響だろう…

「本」とのスリリングな出会いを求めて ~いまこそ、読書会のすすめ~

読書というと、じっと一人で読むもの、というイメージがあったが、最近はそうでもない。非常にアクティブで、外交的なツールとしての本がある。とくに近年、読書会が流行の兆しを見せている。流行というよりもむしろ、定番の活動として世間に定着しつつある…

書籍三題噺 ~本と本は次元の高いコンテキストでつながっている~

『人生を変える心理スキル99』(岸正龍著、きこ書房刊)を読み終えた。 カバーイラストの軽さとは相まって、400ページ以上にわたって、フロイトやユングなどの古典的な心理学から行動経済学までを広く取り扱い、実用的にすっきりしっかりとまとめられている…

1000人突破!感謝いたします。本とITを研究する会に向けて

このたび、出版関係者やITエンジニアを中心に結成された「本とITを研究する会」のメンバーが、1000人を超えました。 本とITを研究する会https://tech-dialoge.doorkeeper.jp/ 加入していただいた仲間たち、イベントや勉強会、セミナーに参加していただいた仲…

令和改元から半年、ベルリンの壁崩壊から30年周年を迎え、考えた「分断」と世界

旧東ドイツ側から撮影した、東西世界分断の象徴である、ベルリン・ブランデンブルク門 旧東ドイツの象徴的モニュメント「世界時計」(ベルリンにて撮影) ベルリンの壁の破片(実物)令和改元から半年。同時に、東西冷戦の象徴であるベルリンの壁崩壊から11…

驚異のiSO式フラッシュ速読と、子どもの脳の不思議な力

このところ速読が注目されている。欧米の横文字文化では速読が当たり前で、アメリカのケネディ大統領が速読の技術で大量な書類をさばいていたというエピソードはよく耳にする。1960年代から日本でも日本語の速読をビジネス用途で開発する人たちが現れ、同時…

「夏休み子供科学電話相談室」から学ぶ「どうして?」の力

毎年夏になると、NHKラジオで恒例の「夏休み子供科学電話相談室」が放送されている。最近は仕事で子供たちと接する機会が多い関係もあってか、これを聞くたびに、子供たちの感性の豊かさに心が動かされる。たとえば、 「どうして星は流れ星になって落ちてこ…

教養としての「文学」のすすめ

7月3日(水)には勉強会「AI導入は出版業界を救うか?」を開催する。5月10日のブログエントリーで書いたとおり、登壇者の二人であるITエンジニアの三井さんと文学YouTuberベルさんとで、事前MTGを実施した。このときの議事録を読みながら、本を巡った談話の…

Springフレームワークを巡る16年

「Spring Boot2」はSpringフレームワークの一部として基幹系システムでよく使われている定番Javaフレームワークである。私の会社で制作をお手伝いした、2018年11月発刊の『現場至上主義 Spring Boot2徹底活用』(韓国版の発刊も決定)は、Spring Boot2とその…

『コンビニ人間』を読んで考えた「自分らしさ」を追求する手段としての「教養」と「感性」

このごろよく使われるキーワードに「自分らしさ」がある。2016年に第155回芥川賞を受賞し、その後文庫化され累計100万部を突破したベストセラー『コンビニ人間』。この作品を読んだ人は本ブログ読者にも多いはずだ。 主人公は30代半ばの独身アルバイト女性。…

「ボヘミアン・ラプソディ」と「ゴルトベルク変奏曲」が見せてくれた、「体験」を進化させるテクノロジーの力

映画「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットで、空前のクイーンブーム到来と言われている。第91回アカデミー賞で5部門にノミネートされ、1月時点で累計興行収入100億4168万7580円、観客動員は727万904人に到達したそうだ。クイーン世代の中高年に限定されず、…