今回は、ワイダ晩年の映画『菖蒲』の原作も書いたポーランド文学者、ヤロスワフ・イヴァシュケヴィッチの作品を取り上げる。
『尼僧ヨアンナ』と聞くと、1962年のイエジー・カヴァレロヴィッチの作品を思い出す映画ファンも少なくないだろう。東欧文学独特の、なんともいえない幻想的な雰囲気を漂わせている。岩波文庫に入り手軽に読めるようになったので読んでみた。
どんなお話かというと、ひとこと、「悪魔祓い」。
ある修道院の尼僧たちが集団で悪魔に憑かれる。
その悪魔祓いをしようと派遣されてきた牧師のスーリンが、修道院で不思議な体験をする物語。
17世紀にフランスで起こった実話に基づいた小説だという。
最も強力な悪魔憑きは修道院長のヨアンナ。
彼女には6つの悪魔が憑いている(らしい)。
悪魔とは本当にいるのか、神が万物を創造したのであるなら悪魔も神が創造したのではないか。そして悪魔とは本来、「人間」ではないのか。
こうした深刻な問題を読者に突きつけてくる。
物語のラストもまた強烈である。
学生時代に映画を観て感動し、原作に手を出してみたが(当時は恒文社から出ていた)、いまいち響かなかった。
年月を経て改めて読んでみて、こんなに深く、美しい作品だったのかと、内容の濃さを発見した次第だ。
映画においては、ヨアンナが悪魔に憑かれて暴れ回り、ひどい言葉を吐くシーンが印象的。これは東欧の「エクソシスト」であり、さまざまな角度から評価することができる作品でもある。
社内外の読書仲間たちに紹介して、皆さん「面白い」と評価が高かったことも、て付け加えておく。
また映画を観たことがない人には、ぜひ、カヴァレロヴィッチの作品も併せて観ていただきたい。