本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

セミナー・レポート:「想いが伝わる社会を実現する」をミッションに、書店復興事業のアイデアを構築(ワーク2日目・前編)

・3月3日(土)、品川区立品川産業支援交流施設SHIPにて、産業技術大学院大学OPI公開講座『中小企業のための新規事業の作りかた~リーンスタートアップイノベーションを起こす~』のユニット2(ワーク2日目)が行われた。

◎オープニングで、三津田堂書店の社長として書店復興のストーリーを語るf:id:tech-dialoge:20180307214607j:plain

「想いが伝わる社会を実現する」をミッションに、2日間のワークで、5チームに分かれて書店復興事業のアイデアを作成した。時間や情報ど数々の制約がある中、全員が意味のあるアウトプットを作り上げ、共有した。
ユニット2のタイムテーブルは以下の通り。

講義 ユニット1の振り返り
講義 課題の解決策とは?
   課題の解決策を見つける
ワーク アイデアを探しにいこう
    手順説明と準備
    アイデア出し
    アイデアを収束しよう
    顧客テスト
講義 目標の確認
   ビジョンの文言修正と署名
講義 ビジネスモデルデザイン基礎講座
ワーク アイデアからビジネスモデルキャンバスを作る
    プロトタイピング
    クリティカルな前提の決定
    MVPアイデア出しとシートの作成
講義 発表方法の説明
ワーク 各チームの発表準備
    くじ引きで発表順を決める
    発表分担を各チーム内で決めてもらう
    発表資料を手直し、発表の自主練
ワーク 各チームのビジネスモデル発表
    1チーム15分×5チーム+休憩(10分)+予備(10分)
    社長から一言
講義 まとめ


2日目も、休憩を挟んで10時から17時まで、のべ7時間におよぶワークとレクチャーが続けられた。

◎ワーク2日目ではさらに集中力が高まるf:id:tech-dialoge:20180307214724j:plain

本日で終了ということで、会場にはポジティブな緊張感が漂っていた。前回はランチタイムになると全員が会場を出てしまったが、今回は会場に残り、チーム内で雑談をしながら昼食をと生徒さんたちが多く見られた。
チーム意識が高まる中、さらに1日のワークをこなし、アイデアをたくさん出す「発散」と、出てきたアイデアを精査する「収束」を何度も繰り返し、初日には笑い声が多く聞かれた会場では今回は黙考の時間も多く、各人集中力を高め、事業構築に頭を絞っていた。

◎模造紙に書き込まれた内容を各自で検討f:id:tech-dialoge:20180307214828j:plain

努力の甲斐あって、会場から出てきた書店復興事業のアイデアは実にユニークだった。さらに煎じ詰めればそのまま事業に使えるのではと思うレベルの事業アイデアがいくつも含まれていた。
5チームのアイデアの背景にはそれぞれ細かな仕掛けと考えが織り込まれているので、要約するとよくあるビジネスに見えてしまいがちだが、これらをレポートとしてあえてまとめると、以下の通りだ。
          
●レビューを通じてつながる本屋
書籍のレビューをコンセプトに、時間がないビジネスパーソンを対象にした書店サービス。この書店ではお客さんが楽しみながら本を短時間で選び出すことができるよう、ブックレビューをエンタテイメントとして提供する。書店をコミュニティ化し、イベントスペースやビブリオバトルなどのイベント企画、コワーキングスペースとしての空間、会員制サービスの提供などにより収益化をはかるというビジネスモデル。

◎「レビューを通じてつながる本屋」ビジネスモデルキャンバスf:id:tech-dialoge:20180307214957j:plain

◎「レビューでつながる本屋」で出された全ワークシートf:id:tech-dialoge:20180307215115j:plain


●想いがつながる「未来写真」

 「私たちが売っているものは写真アルバムではない」がコンセプト。カップルを対象に2人の美しい将来をイメージさせるWebコンテンツやSNS、フォトアルバムなどのサービスを提供する。このサービスにより、お客さんの男女は関係が深まりハッピーな未来を手に入れることができる。

◎想いがつながる「未来写真」ビジネスモデルキャンバスf:id:tech-dialoge:20180307215241j:plain


●知識と食を軸に地域コミュニティを活性化する本屋さん

 おいしい料理を食べたい人、食べさせたい人を対象に書店を展開。クッキングスタジオの提供や、時間の空いた主婦によるお料理のクラウドソーシング・サービスなどのサービスを提供し収益化を計る。書店という空間を中心に食文化と人間が三位一体となり、おのおのが豊かになるというビジネスモデル。

◎「知識と食を軸に地域コミュニティを活性化する本屋さん」ビジネスモデルキャンバスf:id:tech-dialoge:20180307215341j:plain

◎「知識と食を軸に地域コミュニティを活性化する本屋さん」で出された全ワークシートf:id:tech-dialoge:20180307215452j:plain


●ハプニングがインセンティブになる接客業

 書店の接客ノウハウを生かし、接客業一般に向けた教育・コーチング事業へと展開させるというアイデア。接客業務の中で発生する予期せぬ出来事をむしろコミュニケーションの機会としてとらえ、その機会からお客さんとの関係性を深めるという接客姿勢をコンセプトとする。

◎「ハプニングがインセンティブになる接客業」ビジネスモデルキャンバスf:id:tech-dialoge:20180307215550j:plain


●出会い系本屋

 多忙で精神的な救いを求めるビジネスパーソンを対象に、情報と癒やしの双方が手に入るというコンセプトを持つ書店。芸能事務所やモデル事務所とタイアップし、新人デビューの場として書店を機能させることや、朗読会の開催、書籍のサマリの提供で、時間を惜しむビジネスパーソンに向けて書籍選択のための判断軸を与える。会費や広告料などで収益化を図る。

◎「出会い系本屋」ビジネスモデルキャンバスf:id:tech-dialoge:20180307215639j:plain

 

以上が、2日間のワークでのべ60人近い生徒さんたちから出てきた、書店復興事業のアイデアである。後編に続く

三津田治夫