本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

AI自動運転に関する一つの提案 ~現代の産業革命を支える巨大な要素~

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AI自動運転のことを考えていて、ずいぶん昔、工場にロボットが大量導入されたころ、ロボットが暴走して人間にけがを負わせたり殺してしまったらどうするのかという議論がさんざんとなされていたことを思い出した。
しかし工場のロボットとAI自動運転の問題との間には、大きな隔たりがある。
自動運転は、工場という限定された空間ではなく、公道というオープンな空間で使われるロボットの話である。そして公道というオープンな空間では、起こることの限定は難しい。これに伴い、起こった問題の責任の所在を限定することが難しい。
これが、昨今の、AI自動運転を巡る最大の論点を構成している。

「なにが」車を運転するのか?
もう一つは、「なにが運転するか」である。
まず自動運転は、AIにより操作される。
AIは人間の五感の代わりにセンサーを用いる。
AIは人間の記憶や訓練結果の代わりに、データベースを用いる。
そしてそのAIは、プログラマーによりコーディングされる。
そしてコーディングは、発注者の仕様書に従い実施される。
そして仕様書は、発注者からのヒアリングにより記述される。
ここまでですでに、6つのシステムならびに人的要因が抜き出された。
つまり、自動運転により事故や過失などの問題が生じた場合、責任がどこに所在するのかという限定がメーカー側でも困難になるのだ。
ある意見では、プログラマーに責任が集中するというものもあり、あるいはデータベースに責任を帰する意見もある。
極言すれば、プログラマーが命の責任を問われうる時代になったのである。

エンジニアリングの再定義と業界の再編が起こる
極めて身体から離れた仕事がプログラミングだと思われていたが、AI時代の今日において、実に身体的な仕事に変化したのだともいえる。
言い換えると、AIの時代とは、人間とはなにかを再確認するとともに、「プログラマーって誰?」「エンジニアリングってなに?」を再確認する時代でもあるのだ。
再認識という観点から、AIの時代には、自動車業界、プログラミング業界、もろもろが大きく再編される。
トヨタは、内燃機関の部門が大幅に削減されることで、従業員数がいまの三分の一になるという話もある。
これに伴って内燃機関の設計をするエンジニアや、設計ソフトや基幹システムを開発するプログラマーなども、大きな業態転換が迫られている。
その時期は遠い未来ではない。
すでにいま、ここにきている。

働き方改革」にもつながっている、AI自動運転ムーブメント
それは、政府が掲げる働き方改革にもつながってくる。
トヨタをはじめ大企業たちには上記業態転換が喫緊の課題となっている。
そして、イノベーションだスタートアップだというキーワードやおぼろげな意識はあるものの、100億円規模の売り上げでないと認められない、小さなスタートアップは許されない、融資条件が云々などの制約で、思考と行動が停止する。
企業は働き方改革というお題目のもとで、見込みが立たない収益の代わりに従業員数を減らすことで存続の活路を見出そうとしている。収益の見込みが立たなければその企業の納税は減り、政府の国債発行数は増加して銀行金利は上がり、株価が下がり経済が冷え込み、国力が低下し政府の国民への教育や事業政策への活動資金は手薄になる。負のスパイラルは昔の小泉政権のように、自己責任という怪しげなキーワードを生みはじめる怖れもある。

AI自動運転は、現代の産業革命を支える巨大な要素
いまは、AIというコンピューティングが、人間や社会、組織の意味や容態を大きく書き換えていく時代だ。
かつては人間や牛馬の筋肉を代替する蒸気機関が人間や社会、組織の意味や容態を書き換えてきたように、現代は、人間の知能を代替するAIが、人間や社会、組織の意味や容態を大きく書き換えている。
蒸気機関とAIとの最大の相違点は、手で掴むことができる物体であることと、それができない情報であること、である。
さらに情報は、デジタル化・ネットワーク化されている。
これにより瞬時にコピー・蓄積・転送が可能である。
すなわち、人間が持つ時間や空間という概念を大きく書き換えるものが、AIというコンピューティングがもたらした、現代の産業革命である。

こうした大きな波を構成する1つの巨大なエレメントが、AI自動運転である。
AI自動運転は、ソフトウェア技術とハードウェア技術の集大成だ。それは、手足の代わりに車輪を持つ、人間とともに暮らす大型ロボットである。

AI自動運転が教えてくれる私たちの未来
AIで自動運転される車社会と、私たち人間はどう共存するか。
これが、いまの私たちに突きつけられた、大きな課題である。
ここから、課題を構成する要素として、業界のこと、組織のこと、技術のことを徹底的に考察する。
これにより我々日本人は、あたふたせず、方向性を見据え、動くことができるはずだ。

そんな、AI自動運転時代のいまへのアプローチを、私は提言したい。

三津田治夫