本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

セミナー・レポート:8月17日(金)開催「AI時代の子供の人生を豊かにする、プログラミング教育のチカラ」~第10回 本とITを研究する会セミナー~

8月17日(金)、サブタイトルに「つくばの古民家で論理思考を学ぶ意味」と冠し、「AI時代の子供の人生を豊かにする、プログラミング教育のチカラ」C60東京本社・秋葉原セミナーラウンジにて開催した。

◎AI時代を担う子供たちへの教育を熱く語る谷藤賢一氏f:id:tech-dialoge:20180823135058j:plain

2020年から必修化される子供たちのプログラミング教育について、今後起こりうる就職環境の変化や、能力基準のシフトなど、2時間、谷藤賢一氏に語っていただいた。

家族連れや父母の単独参加、教員など、さまざまな方が熱心に耳を傾け、プログラミング教育に対する関心の高さがうかがえた。

◎さまざまな方が参加する会場の風景f:id:tech-dialoge:20180823135241j:plain

 一流企業で組織でのぼりつめることが決して幸福ではないいま、かつては一流と言われていた企業が続々と業績並びに企業価値を低下させている。そんな中、子供たちに偏差値の高い組織人になることを求める「昭和脳」にとらわれた両親がいまだに多いという。そうした接し方が子供たちから才能の芽を刈り取ってしまうというのが、谷藤氏の論点である。

プログラミングは思考方法を育てるタネにはなろうが、そのすべてではない
本編でとくに印象に残っているのは、「プログラミングを学べばロジカル・シンキングが自然と身につくわけではない。」という指摘。確かに、世間一般で誤解されている気がする。

プログラミングとは処理の手順を組み立てるものであり、それを実現するために必ずしも論理的思考が求められるというわけではない。つまり、処理の手順を「組み立てる方法」さえ知っていればよいのである。プログラミングとは物事を実現するための「手段」であり、手段の暗記から脱しない限り、ロジカル・シンキングという「思考方法」はまず身につかない。プログラミングは思考方法を育てるタネにはなろうが、そのすべてではないことを強く意識することが大切である。日本のプログラミング教育が手段の伝授に陥るのではという懸念も、少なからず抱いた。

AI時代に来るべき問題が数々提示しつつも、ロボット税によるベーシックインカムの導入や、将来を見据えた優秀な若手官僚の登場など、決して暗い未来ではないことも最後に付け加えられた。

そもそもロジカル・論理的って、なに?
本編を終え、懇親会で「そもそもロジカル・論理的って、なに?」という質問が参加者から投げかけられた。従来の考え方では、数式をよく知っていることや、ディベートが上手、理路整然とスピーチできるなど、記憶力やテクニックにたけたことが「ロジカル・論理的」と言われる向きがあった。しかしどうもこれは違う。ロジカル・論理的とは、「そもそも」を追求することである。物事の本質を追究する自他との「対話」を尊重することが、ロジカル・論理的の根底にあるのだと、本勉強会を通して私は再確認した。相手の言葉を互いに傾聴し、一体なにが語られているのかを精査し、互いの中で「そもそも」への理解を共有する。「ロジカル・論理的」であるとは、記憶力やテクニックの問題ではなく、「プロセスの問題」ではないか。

◎ライトを消して懇親会を開催f:id:tech-dialoge:20180823135410j:plain

会場では笑いが絶えず、懇親会では夜遅くまで語り合い、言葉の行間にも気づくことは多かった。

谷藤氏はAI時代の「学び」が抱える問題解決のために、C言語によるロボット・プログラミングや心理学、論理思考というアプローチを通し、つくばの古民家で「子ども社会塾」に取り組んでいる。今後の活動に注目したい。

三津田治夫