近頃はマーラ―ばかりを聴いている。
学生時代は交響曲第1番『巨人』は少し聴いていたが、それ以外はどうも肌に合わなかった(ちなみに1980年代、世紀末に迫ることを機に「空前のマーラーブーム」というものがあった。その影響で外発的に聞いていた)。
が、最近はなぜかマーラ―ばかりだ。
とくに交響曲第7番『夜の歌』は衝撃的な音楽体験で、日々愛聴している(しかし写真は交響曲第8番『千人の交響曲』(小澤征爾)。こちらも傑作)。
音楽や文章への嗜好は年齢によってまったく変わる。
しかしそれがなにがきっかけで起こるのか、さっぱりわからない。
学生時代は
「モーツァルトを聴くような気取った中年にはなりたくない」
「ゲーテを読んで納得し世間を知ったような老人にはなりたくない」
と、本気で思っていた。一種の、大きなものに対する若者の反発心からだろうか。
しかし現実は、40代前半からモーツァルトのオペラから入って抜けられなくなり、そこから交響曲にはまって、いまにいたる。
40代中半からはゲーテの小説と詩に魅了され、いまにいたる。
いったい自分はどうなったのだろうと、たびたび学生時代を振り返ってみたりもした。
それでもって、50代前半になり、今度はマーラ―である。
しかし考えてみたら、こうして年をとるのも悪くない。
いままで読めなかったもの、聴こえなかったものが、読めたり、聴こえたりするのだから。
20代、30代、40代と、年齢とともに作品との感動的な出会いが何度も起こるのは、実に面白い。