クライストの書いた喜劇とはどんなものだろう。
そんな疑問を持ちながら読んでみた。
さすがクライストだけあって、喜劇とはいえ辛口。
割れてしまった甕を巡る裁判を通していろいろな事実が判明し、そこにオチがつく。
クライストの作品の中ではわかりやすい世界観を持っている。
ゲーテがワイマールの国立劇場で『こわれがめ』を上演したら演出が大失敗し、それがきっかけでクライストとゲーテの仲が悪くなったらしい。
しかしこういった戯曲、最近は上演しているのだろうか。
上演の話はあまり聞かない。
このような「読まれるだけの名作戯曲」があることを、改めて認識した。
たとえばゴーゴリの『検察官』も同類だろう。
名作の名は高いが、上演の話はあまり聞いたことがない。
そう考えると、シェイクスピアやチェーホフのような「読まれ、演じられる戯曲」は少ない。非常にレベルが高い創作物だといえる。
三津田治夫