ユルゲン・ハーバーマスの『自然主義と宗教の間』を行きつ戻りつ読んだ。
近年の論文ばかりを集めたこの本、いわばハーバーマスの詰め合わせ。
ハーバーマスが来日したときに京都で語った感動的な講演録(幼少期の体験から思索への出会い)をはじめ、後半のカント論は「こんな読み方があったのか!」と、数多くの発見や感動がある。
カントやヘーゲルの文体がいまの時代に再出現したような彼の書きっぷりは哲学書以外の何物でもなく、かといってデリダのような読者を意識的に扇動するような外連味もまったくない。まじめな宗教論、意識論、コミュニティ論である。
論文集とはいえ、商業性を完全に無視した貴重な書籍である。
言い換えると「書物は消費されるべきではない」を体を張って示してくれている。立派な本である。
三津田治夫