ゴンブロヴィッチはブルーノ・シュルツやヴィトキエヴィッチと並んでポーランド文学の異端派として名が知られている、南米アルゼンチン亡命の作家。
彼の作品は『フェルディドゥルケ』に3回挑戦したが理解ができなかった。
そして『ポルノグラフィア』は彼の作品に対する4回目の挑戦。
ようやく作品から理解を手にすることができた。
理解までにたどり着く労力はカフカ並みに時間がかかった。
『ポルノグラフィア』は、マルキ・ド・サドから残虐性を取り除き、カフカの作風(登場人物の言動、展開の読みづらさ)を合わせたような作品。
中年コンビと若いカップルが主人公で、第二次世界大戦中が舞台。
中年コンビが若いカップルの戯れを観察する覗き趣味に走ったり、コンビのリーダーが策略のシナリオを作りカップルに三角関係を工作したり、ポーランド反乱兵が闖入したり、シナリオが次第に狂気を帯び、カップルを巻き込んだ殺人計画へと発展する。
個人の嗜好が高じた結果としての変態趣味と凶器によるサスペンスが入り混じり、現代人にも通じるメンタリティを見事に言語化しており、古さを感じさせない。
ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
以下本文から、作品の象徴的な言葉を引用する。
「私は何か事が終わったときにいつも感ずるような幻滅感を味わった――実現ということは、いつでも何か得体の知れぬ、漠としたものであり、意図そのものの大きさと純粋さは失われる。」
作家の屈折した心理描写をポーランド語から日本語にした工藤幸雄の名訳。1960年の作品。
三津田治夫