本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

第2回「ピアニスト髙橋望によるブックトークと音楽」を開催 ~文化という場ができた稀有な一日~

今回で第2回目を数えることができた「ピアニスト髙橋望によるブックトークと音楽」。
2025年2月16日日曜日の午後、ピアノカフェ・ベヒシュタインにて、多くのお客さんに囲まれ、本と音楽のマリアージュが2時間展開された。
(第1回目の模様はこちら

今回ブックトークで取り上げられた書籍は以下の通り。

◎今回紹介された多彩な選書

小説から詩、エッセイ、古典、評論まで、前回同様、幅広い選書だった。

レーモン・クノーの名著『文体練習』を手にするピアニスト、髙橋望さん

◎『文体練習』を音楽と絡め、熱くトーク

トークとの間で奏でられるピアノ


このイベントは音楽と共に言葉をテーマにした集まりなのだが、このイベントを言葉でレポートすることはなかなか難しい。
なんと表現したらよいのか。髙橋望さんの語る言葉は、言葉というよりも「音」なのである。あわせて奏でられるピアノの楽曲とセットになり、語られる内容が私たちに伝わる。そんな稀有な体験を共有した。

◎日本の古典文学の現代語訳版の面白さを、現代版オペラと重ねて解説する

◎楽譜による解説も行われた

このイベントはもしかしたら、表記するのなら文字ではなく、楽譜で表現されるべきなのかもしれない。

私が文字でいろいろと伝えるよりも会場からの生の声を伝えることの方が、より伝わるだろう。そう感じたので、今回は参加していただいた方々の声をまとめた。

◎質疑応答の時間でも熱い語りが繰り広げられた

 

◎中央から右に、髙橋望さん、会をサポートいただいた高橋徹さん、左が司会の三津田

 

まずは、イベントの企画から実施までをサポートいただいた、高橋徹さんからのレポートを、以下に掲載させていただく。


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日曜日の午後は髙橋望さんのブックトークイベントに参加しました。

R・クノーの『文体練習』とゴルトベルク変奏曲の共通点からスタートです。
この本は、バスの中で起こった他愛のない出来事を99通りの異なる文体で書き分けた不思議な作品。
これが、ゴルトベルク変奏曲の低音部の変奏と似ているのではないかという望さんのお話に妙に納得してしまいました。
確かにストーリーではなく文体=音楽を支える低音部の変奏って感じになりますね。
翻訳者の朝比奈さんは、若い人が語尾の母音を伸ばす話し方まで文体として挿入していて面白かったです。
次に音楽のカデンツ(終止形)と文章の句点が似てるよねということになり、バッハのシンフォニア第11番ト短調を例に詳しく説明して頂きました。
楽譜を色分けしてモチーフとそうでない所を見える化すると一旦終止する所が良くわかります。
これを意識して演奏を聴くとメリハリの効いた文章のように思えるから、いやー不思議。

河出書房新社から出ている日本文学全集では古典を現代語訳で出すこととオペラの読み替えについてお話が聞けました。
古典を現代人にとってより身近にするためにはどちらも必要なのかも知れませんね。
先日までドイツ・フランスを旅行されたときに観たオペラを例に楽しいお話を聞けました。
ベルリン・ドイツオペラはクラッツァー演出の新制作R・シュトラウス影のない女」パリ・ガルニエ宮ではP・セラーズ演出のラモー「カストールとポリュックス」指揮はクルレンツィスだったそうです。

その他にも、アルド・チッコリーニの感動的なカーネギーホール・デビューを含む自伝や、永竹由幸さんのオペラと歌舞伎、望さんご自身が登場する原田満さんのオペラ放浪記など、硬軟織り交ぜた音楽と本の話で、あっと言う間のお開きでした。

アンコールは、ヘンデルメヌエットト短調
何度か聴いてますが、切々と訴えるような素敵な曲です。
次回があれば是非また参加したいです。
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◎会場付近で望さんを囲んで懇親会を開催。音楽、文学、絵画、彫刻、舞踊、歴史、哲学、などを語り合う時間の経過は、あっという間


続いて、会場から寄せられたアンケートからの言葉をまとめさせていただいた。

これらを通して、髙橋望さんが言葉と楽器で奏でた「音」が伝われば嬉しい。

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以前から、バッハが作曲家として数学的、天文学的な考えも含めた構想を持ち、聴く者達がとても心地よく感じる音階での沢山の表現方法で曲を残したことを改めて確認しました。
髙橋氏がピアニストとしてだけでなく読書家としても豊富な知識から自論をお話してくださるのも、とても興味深いです。
(精神薬専門薬剤師)

ゴルトベルク変奏曲の主題が変奏されていくことが、音楽だけでなく文学作品にもあることを知って目から鱗でした。
オープニングトークは私が無知すぎて難しかったですが、鳥肌が立ちました。C.BECHSTEINは初めて聴くピアノでしたが、Steinwayベーゼンドルファーを合わせて良いとこ取りした音色に感じて素敵でした。
髙橋先生のブックトークも第1回とは違う視点からのアプローチで勉強になりました。
「髙橋先生がピアノ演奏で悩んだことがあり、本(ピアニストの思考)で答を見付けた」といったお話もいままで髙橋先生から伺ったことがなかったので新鮮でした。
ドリンクを飲みながら聴くスタイルも良かったです。
(林みどり)

バッハの偉大さの一因は、卓越した「型」使いあるのだということに改めて気づかされました。クノーの「文体練習」と重ねて考える、というアプローチに膝を打つ思いでした。高橋さんは、本を通して音楽とはさまざまな異質なものと出会い、ご自身のなかに取り込んで創造的な活動に昇華させておられるのだな、とも感じました。
自分がまだ馴染みのないものを紹介していただければ幸いです。というと具体的な提案になりませんが(笑)。
「他者から与えられるもの」の大切さ、おもしろさを楽しみたいと思います。
たとえ自分がすでに知っていると思っていることでも、他者の目をとおして再会すると、新しい出会いになるのではないかと思います。

ステキな「場」でした。会場はもとより、参集されたみなさんとも楽しく打ち解けてお話ができました。
主宰者の熱意やよきお人柄に帰するところが大きいのでしょうね。
高橋さんのこれからのコラボレーション活動も楽しみにしております。
(情報編集・校正サポートなど)

音楽と本の関係を様々な視点から考察する髙橋望さんの見識の広さに、感服しました。
これからも3回4回と継続したイベントとなりますよう、強く願っております。
(会社員)

元々読書をしないが、好きな望さんの音楽と本の繋がりを感じ、本が読みたくなった。
(会社員)

髙橋さんの深い教養に感じいりました。
(画廊主宰)

本と音楽の共通点、とても興味深いお話でした。
紹介されていた本、読んでみたいと思いました。
素晴らしい演奏とお話をありがとうございました。
(ピアノ講師、Webデザイナー

音楽が好きなので、またこのような会がありましたら参加したいです。
(会社員)

多彩な参加者の方々と交流ができて、貴重な体験となりました。
(自営業)
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最後に、私が感じたことを。
文化とは「文字が化けたもの」と解釈していたが、どうもそうではないようだ。
つまり、ここで奏でられた音、発せられた音、人が発した言葉、集まった場、そこの空気、すべてを総じて「文化」ということである。

髙橋望さん、参加された皆様、素晴らしい場を生み出していただき、ありがとうございました。

三津田治夫