本とITを考える

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本やニュースを読みながら、ITの未来を考えていきます

AIは労働「道」を生み出す

「AIは人間の労働を奪うか?」という恐怖感は、産業革命の時代に労働者たちが蒸気機関の機械を打ち壊した恐怖感に似ている。現代においては、奪う、ではなく、「代替する」が正しい表現だろう。

AIにより人間の労働時間が減少すれば、ベーシックインカムのような経済システムも導入されるだろうし、加えて、労働のスタイルそのものが変化する。

戦争がなくなった江戸時代の武士たちは、本業がないから武士道や剣道、柔道という「道」に時間を費やした。欧州でも中世が終わり騎士の実戦の場がなくなると同時に騎士道が生まれた。

私は、人間の労働時間が減少したら、同様に「労働道」という「道」が出現することを予測している。AI時代の高い教養を持つビジネスマンは、労働の道、労働の型、労働の流儀、などを身につけることに時間を費やす。

「道」とはつまり美学の世界である。これは、ビジネスから美学が果たして生まれるのだろうかという、AI時代の人間に試された大きな課題だともいえる。

その意味でもAIの時代にこそ、美や芸術、それを理解し創造する人間力といった、「ふわっとしたもの」に価値が認められるだろう。言い換えれば、「文系の時代」の到来である。

AI時代に文系とは逆説的に捉えられようが、事実、その時代が目前に来ている。そんな気がするのは私だけではないはず。美や芸術が価値を帯びる文系の時代とは、どういった時代になるのか。その中には、(本来理系だけの所有物であった)コンピューティングが大きくかかわってくる。想像するだけでも、興味津々である。

三津田治夫