本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

2024-01-01から1年間の記事一覧

「クイーンと私」【その6】:『無敵艦隊スターフリート』(ブライアン・メイ&フレンズ)

このジャケ写真を見てお気づきの方も多いと思うが、これは1980~1981年にテレビ放映されていた永井豪原作のSF人形劇『Xボンバー』である。当時は「日本版サンダーバード」と喧伝されるほど高度な技術を導入した人形劇だったが、残念ながら視聴する子供たちは…

第17回飯田橋読書会の記録:『山月記』『名人伝』『悟浄出世』『文字禍』(中島敦 著) ~東洋のボルヘスが描く数々の名品~

中島敦といえば明治・大正・昭和と33年の短い人生で3つの時代を生きた日本を代表する作家である。中学校の教科書にも登場した記憶がある方も多いはずだ。 今回取り上げた短編の名手中島敦の『山月記』『名人伝』『悟浄出世』『文字禍』は、いずれも中短編。 …

「クイーンと私」【その5】:『シートキッカーズ』

クイーンのライブ盤というと『ライブ・キラーズ』が有名で、私はリアルタイムでよく聞いていたが、スタジオ録音に技巧を凝らしまくったクイーンの楽曲のライブには、いささか物足りなさを感じていた。そんな矢先、16歳のときに地元の中古レコード屋さんで150…

読みました:『起業家ビル・トッテン ~ITビジネス奮闘記~』(砂田薫 著) ~日本のITがパワフルだった時代の貴重なドキュメンタリー~

書名にビル・トッテン氏の名前と、サブタイトルに「ITビジネス奮闘記」とあるので、同氏をフューチャーした起業物語かと思ったが、実は違う。1960年代から2000年代までの日本のIT史をビジネスという側面から切り出した、多数のインタビューに基づいた貴重な…

読みました:『新規事業を必ず生み出す経営』(守屋実 著) ~日本の企業たちに向けた現代の寸鉄詩~

税込14,850円の高額書ながら、重版を重ね売れ続けている名著。守屋さんの既刊『起業は意志が10割』『新しい一歩を踏み出そう!』の論調を軸にし、新規事業や起業に取り組む人にとって価値のある、最新事例と著者の見立てが読める。大企業で発生する「あるある…

「クイーンと私」【その4】:『世界に捧ぐ』

フレディがインド生まれであることは生前から周知の事実だったが、その他過去のことはほぼ語られることがなかった。フレディが生前積極的に語ることがなかった過去が、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の中で明らかにされる。「ムスターファ」など、クイーン…

本と音楽のマリアージュ「ピアニスト髙橋望による ブックトークと音楽」を開催

2024年2月23日(金)天皇誕生日、クラシック音楽に親しむ会、本とITを研究する会、株式会社ツークンフト・ワークスの共催で、「ピアニスト髙橋望による ブックトークと音楽」を都内B-tech Japanで開催した。満員御礼、あっという間の2時間だった。 今回取り…

新刊『エンジニアのためのWeb3開発入門』(インプレス刊)が配本されました

当社、株式会社ツークンフト・ワークスが制作のお手伝いをしました新刊、「『エンジニアのためのWeb3開発入門』 ~イーサリアム・NFT・DAOによるブロックチェーンWebアプリ開発~」の見本が到着いたしました。ブロックチェーン技術が成熟しつつあり、Web3は…

読みました:『ネオ・ダダの逆説 ~反芸術と芸術~』(菅章 著、みすず書房 刊) ~アートとその本質とのジレンマ~

作者は『現代美術史』(山本浩貴著)に記された日本現代美術史を取り上げ、「驚くべきことに〈ネオ・ダダ〉は〈ハイレッド・センター〉の項目の中で、赤瀬川原平を語る際(「赤瀬川原平とネオ・ダダ」という小見出しが付され)わずか10行の記述にとどまり、…

「SEによる、SEのためのパワー交換会」を開催しました。

2月14日(水)、「顔OFF OK」ということで、IT開発現場のエンジニアたちが11人集まり、IT書籍著者・IT教育コンテンツ開発者の谷藤賢一氏を中心に、参加者たちとの現場ぶっちゃけ本音トーク「SEによる、SEのためのパワー交換会」を、のべで3時間行った。 独立…

第45回・飯田橋読書会の記録:『アラブが見た十字軍』(アミン・マアルーフ著)

2023年ラストの飯田橋読書会は、『アラブが見た十字軍』(アミン・マアルーフ著、 筑摩書房刊)を取り上げた。アラブが語られる際に、私たちの耳目に入る情報は西洋からのものがほとんどであるが、本作はアラブがいかに西洋から侵略されたのかという逆の視点…

「クイーンと私」【その3】:『クイーン詩集』

クイーンの歌詞は、取りつく島のない、物寂しい、薄暗いものが多い。その対極に「バイシクル・レース」のような純粋な言葉遊びがあったり、クイーンの作り出す詩の世界のコンテキストは奥深く広い。 私が『クイーン詩集』を買った当時(大学生)も、クイーン…

2/23(金)休日、イベント「ピアニストによる ブックトークと音楽」を開催します

FM番組「クラシック音楽への旅」のパーソナリティをつとめるピアニスト髙橋望が、本と音楽のコラボ・イベントを開催します。 ゲーテ、バッハ、三島由紀夫、シューベルト、川端康成、ショパン、E.T.A.ホフマン、シューマン、チャールズ・バーニーなど……。古今…

読みました:『ねむれ巴里』(金子光晴著)~濃い日本人が多数登場する1930年詩人のパリ滞在記~

少女の頭蓋骨から作った杯を見たとか、川の上の娼館から落ちた娼婦が鰐に食われたとか、どこまでが本当でどこからが詩想なのか、境界線がほとんど見えない金子光晴(1895~1975年)の作品は面白い。本作は純粋な紀行文学、文明論、エッセイとして味読できる…

「クイーンと私」【その2】:『戦慄の女王』

デビューアルバム『戦慄の女王』において、すでにクイーンは完成されていた。映画『ボヘミアン・ラプソディ』ではこれ以前の、ブライアン・メイとロジャー・テイラーが結成した「スマイル」の時代から描かれている。スマイルがあのままのバンドだったら、よ…

読みました:中欧の香り漂うポーランド文学『逃亡派』(オルガ・トカルチュク 著、小椋彩 訳)

旅の物語や解剖学にまつわる昔話、量子力学、ショパンの心臓のエピソードなど、116の断章からなる不思議なポーランド文学。ポーランドと言えばお隣のウクライナが緊張状態で大変なことになっている。このような、西と東の狭間にある地理的状況と、それゆえの…

「クイーンと私」【その1】:『Queen2』

写真の『Queen2』は、15歳のとき(1983年)、私が生まれて初めて購入した輸入盤LPレコード。当時国内版LPというと2600円したが、輸入盤だと1700円で買えたので、葛飾の自宅からお茶の水まで電車賃節約のため自転車をこいで『Queen2』を買いに行ったものだ。 …

当社株式会社ツークンフト・ワークスは創業7年目を迎えることができました

本日、2024年1月11日(木)をもちまして、当社株式会社ツークンフト・ワークスは創業7年目を迎えることができました。ここまで来られたのは、支えてくださった皆様のお力にほかなりません。ここをもって、厚くお礼を申し上げます。 2018年1月、雪が降りそう…

読みました:『詐欺師フェーリクス・クルルの告白』(トーマス・マン著)

未完の中編ながらも、実は、本作は名著『魔の山』『ヴェニスに死す』にはめ込む挿話として構想されていたものだという。1922~1937年の作品。 トーマス・マン独特の、言葉をこねくり回したような表現と、この時代のドイツ語文学ならではの描写や文脈が盛りだ…