2024-01-01から1年間の記事一覧
企画書というと企画趣旨や概要、対象読者、目次、本の体裁といった、本そのものについて説明される文書であるが、さらにその次の、本をどのように読者に届けるかという道筋としての「販促案」を考え、記述しておくことが重要だ。販促案が考えられているか否…
ユルゲン・ハーバーマスの『自然主義と宗教の間』を行きつ戻りつ読んだ。近年の論文ばかりを集めたこの本、いわばハーバーマスの詰め合わせ。ハーバーマスが来日したときに京都で語った感動的な講演録(幼少期の体験から思索への出会い)をはじめ、後半のカ…
かつては「小パリ」と呼ばれたドイツの音楽や文芸の街、ライプツィッヒ(Leipzig)から交通機関で1時間ほど南下すると、小さな町ツヴェンカウ(Zwenkau)がある。ツヴェンカウの36年来の友人コリンナの旧宅で現ミュージアム「ハウスラーベ」(Haus Rabe)に…
都内で読書会を開催。参加者は五名。テーマは、カントと、柄谷行人の『トランスクリティーク』。 話題のほとんどはカントの認識論的形而上学でした。 次回は、西洋哲学と東洋哲学を横断したテーマにしたトランスクリティークを試みたいという要望から、2月22…
今回のテーマは2冊ということで、ミヒャエル・エンデの『モモ』と大島弓子の『綿の国星』の組み合わせだった。前回、「次回のテーマ」を考える際、参加者から『モモ』の声があがり、「ならば『綿の国星』も」と、どんな関連が見出されたのかわからないが、こ…
今回のテーマは、「山田風太郎著『婆娑羅』と網野義彦著『異形の王権』を読み解く」でした。 乱世の時代とはなにか、そもそも南北朝とはなんだったのか、後醍醐天皇は怪人だった、などの意見が2時間飛び交いました。博覧強記の先輩方の薫陶を受け、私の脳は…
今回のテーマは高田宏著『言葉の海へ』でした。西洋に比肩する日本初の国語事典『言海』を編纂した、大槻文彦の評伝小説。 前半の8割が幕末や明治維新を舞台にした人間模様、戦争の物語。後半の2割が辞書作りの話。この辺が『船を編む』の原案になっている。…
ひと昔前「空気読めよ」という言葉が流行った。今回取り上げた『「空気」の研究』(1977年、山本七平著)は、まさにこの流行り言葉の先鞭をつけた作品である。本読書会ではおもに、古典の文学や評論、思想を中心に、誰もが読むベストセラーではないが、一定…
8月5日、株価の大暴落という大ニュースが世間を騒がせた。1987年の10月に起きたブラックマンデー以来の下げ幅である。日経平均が4万を超えるなどの異様さで下落は目に見えていたものの、この一瞬の下落には私も含めて驚いた人は多い。 そして個人的に最も驚…
8月5日、当社で制作をお手伝いさせていただいた新刊『データ分析に強くなるSQLレシピ』 ~小規模データの前処理・分析の書き方&テクニック~が発刊されました。 RDB(リレーショナル・データベース)とSQL(データベースを操作する言語)という、レガシーで…
『マタイ受難曲』(磯山雅 著、東京書籍刊)のオリジナルは残念ながら現在絶版。文庫版にフォーマットを変え再刊されている。 このカバー、実は半透明のハトロン紙。これを外すと、光沢表紙へ4色で印刷されたイエス・キリスト像とバッハの楽譜が出てくる。 …
(2022年5月14日、こんな本と出会っていた)明日で沖縄本土復帰50周年である。本作『つながる沖縄近現代史: 沖縄のいまを考えるための十五章と二十のコラム』は、那覇空港の書店にて、カバーとオビが目に飛び込んできたので買ってみたものだ。以下、沖縄は非…
本の企画書づくりにおいて、目次づくりの次によく受ける質問は、「読者ペルソナ」である。ペルソナとはあまり聞かない言葉かもしれないが、本来マーケティングの用語で、ここでは「読者像」のことを指す。ちなみにペルソナとはラテン語起源の言葉で仮面を意…
近ごろ、読書や教養というキーワードを目にする機会が増えてきた関係か、「読書会」に関する質問や相談をよく受ける。世の中にあふれる専門用語が急速に増え、いわゆる「価値観の多様化」が、本や教養への関心の高まりの原因であるようだ。ここでは、読書会…
「企画書が書けない」の理由にはさまざまなものがある。そこでよく相談を受けるのが「目次が書けない」である。文章が書けるようになっても、目次といった本の構造をつくり上げないことには、書籍を書くことはできない。今回は、前回の書籍の企画書をつくる…
今回は、読書会初の韓国文学への挑戦である。 2016年、イギリスのマン・ブッカー国際賞を受賞した作家、ハン・ガンによる『少年が来る』を取り上げた。 ハン・ガンは1970年生まれ。本作は、彼女の生地、かつての全羅南道道庁所在地の光州で起こった「光州事…
最近「本を書いて出版したい」という相談を受ける機会が増えてきた。ブログやSNSなど、好きに書いたものをデジタルで世に出すことが容易になった昨今、「出版」といったフォーマルな形をとった情報発信の価値が再評価された結果であろう。この相談に私は必ず…
我々が運営する知活人コミュニティが、出版事業を開始しました。その第一弾刊行物が、『埼玉を食べつくす“ネイタマ” Native Saitama: 魅惑のフード合衆国・人生を賭ける埼玉メシのすべて』(高橋智 著)です。 著者の高橋智(プリティ・ワンダフル・サトシ)…
当社株式会社ツークンフト・ワークスにて『経営層のためのサイバーセキュリティ実践入門 ~生成AI、DX、コネクティビティ時代を勝ち抜くための必須スキル~』(淵上真一 監修)の制作のお手伝いをさせていただきました。 232ページの紙幅に、生成AIとクラウ…
このジャケ写真を見てお気づきの方も多いと思うが、これは1980~1981年にテレビ放映されていた永井豪原作のSF人形劇『Xボンバー』である。当時は「日本版サンダーバード」と喧伝されるほど高度な技術を導入した人形劇だったが、残念ながら視聴する子供たちは…
中島敦といえば明治・大正・昭和と33年の短い人生で3つの時代を生きた日本を代表する作家である。中学校の教科書にも登場した記憶がある方も多いはずだ。 今回取り上げた短編の名手中島敦の『山月記』『名人伝』『悟浄出世』『文字禍』は、いずれも中短編。 …
クイーンのライブ盤というと『ライブ・キラーズ』が有名で、私はリアルタイムでよく聞いていたが、スタジオ録音に技巧を凝らしまくったクイーンの楽曲のライブには、いささか物足りなさを感じていた。そんな矢先、16歳のときに地元の中古レコード屋さんで150…
『起業家ビル・トッテン: ITビジネス奮闘記』(砂田 薫 著)は、書名にビル・トッテン氏の名前と、サブタイトルに「ITビジネス奮闘記」とあるので、同氏をフューチャーした起業物語かと思ったが、実は違う。1960年代から2000年代までの日本のIT史をビジネス…
税込14,850円の高額書ながら、重版を重ね売れ続けている名著。守屋さんの既刊『起業は意志が10割』『新しい一歩を踏み出そう!』の論調を軸にし、新規事業や起業に取り組む人にとって価値のある、最新事例と著者の見立てが読める。大企業で発生する「あるある…
フレディがインド生まれであることは生前から周知の事実だったが、その他過去のことはほぼ語られることがなかった。フレディが生前積極的に語ることがなかった過去が、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の中で明らかにされる。「ムスターファ」など、クイーン…
2024年2月23日(金)天皇誕生日、クラシック音楽に親しむ会、本とITを研究する会、株式会社ツークンフト・ワークスの共催で、「ピアニスト髙橋望による ブックトークと音楽」を都内B-tech Japanで開催した。満員御礼、あっという間の2時間だった。 今回取り…
当社、株式会社ツークンフト・ワークスが制作のお手伝いをしました新刊、「『エンジニアのためのWeb3開発入門』 ~イーサリアム・NFT・DAOによるブロックチェーンWebアプリ開発~」の見本が到着いたしました。ブロックチェーン技術が成熟しつつあり、Web3は…
作者は『現代美術史』(山本浩貴著)に記された日本現代美術史を取り上げ、「驚くべきことに〈ネオ・ダダ〉は〈ハイレッド・センター〉の項目の中で、赤瀬川原平を語る際(「赤瀬川原平とネオ・ダダ」という小見出しが付され)わずか10行の記述にとどまり、…
2月14日(水)、「顔OFF OK」ということで、IT開発現場のエンジニアたちが11人集まり、IT書籍著者・IT教育コンテンツ開発者の谷藤賢一氏を中心に、参加者たちとの現場ぶっちゃけ本音トーク「SEによる、SEのためのパワー交換会」を、のべで3時間行った。 独立…
2023年ラストの飯田橋読書会は、『アラブが見た十字軍』(アミン・マアルーフ著、 筑摩書房刊)を取り上げた。アラブが語られる際に、私たちの耳目に入る情報は西洋からのものがほとんどであるが、本作はアラブがいかに西洋から侵略されたのかという逆の視点…