本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

「SEによる、SEのためのパワー交換会」を開催しました。

2月14日(水)、「顔OFF OK」ということで、IT開発現場のエンジニアたちが11人集まり、IT書籍著者・IT教育コンテンツ開発者の谷藤賢一氏を中心に、参加者たちとの現場ぶっちゃけ本音トーク「SEによる、SEのためのパワー交換会」を、のべで3時間行った。

独立しIT企業を立ち上げた方、元金融系SEでIT書籍を執筆するベテランエンジニア、働き方改革のプロ、ホームレス支援をライフワークにするWebエンジニアまで、さまざまな経歴と深い想いを持つ方々から貴重な意見をいただいた。

「プログラミングは、やらされる「お仕事」でよいのか?」という基本的な疑問から、従業員への「要求」が多い現状や、AIが弱者を助ける理想は実現するのだろうか、そもそもIT開発の現場に欠けている本質はなんなのかなどの、多岐にわたる課題や意見が交換された。

「2000年あたりを境にIT開発の現場に異変が起こった」という声はいくつかあがっていた。
それまで現場は、仕様書のインスペクション(査読)に14時間をかけるなど、議論に議論を尽くして最適解を求めソフトウェアを開発する環境、ユーザーの声を繰り返し聴く姿勢、などの風潮があった。
しかしいまではこれら本質が現場から欠損し、時短や収益拡大など目前の課題に上書きされ、ITエンジニアが共有すべきゴール意識がブレてきているという。

また、リベラルアーツやリスキリングという言葉の流行が示すように、社会で生きるためには「総合能力」が求められている。
これはSEやプログラマーなど、ITエンジニアにとっても同じである。

総合能力を手にするために「なにを学んだらよいのか」という質問に、谷藤氏は「そもそもお勉強をして学ぶという発想がダメ。お勉強は答案で数字を出す目前の技術獲得にすぎない」と指摘。
では、なにが必要なのだろうか。
「徹底議論」と「ワクワク」だという。

どんなサービス仕様がユーザーにとって必要なのかを徹底議論し、どんなソフトウェアがその最適解であるのかをワクワクしながらコーディングするという基本姿勢を持つことが重要、という回答だった。

上記「仕様書のインスペクションに14時間」というベテランSEは、「この14時間は熱中し、時間を忘れていた」と回想する。
ITエンジニアのあるべき姿ではないだろうか。

総合能力が社会で求められる一方、「評価の物差しが少ない」という指摘もあった。
いまの世の中の流れだと、
「では、評価の物差しを増やしましょう」と、新しい資格試験や昇進試験のテスト問題が設定され、それに対する答案作成技術が求められ、相変わらず目前の「お勉強」にリソースが費やされるという無限ループが見えてくる。

ITエンジニアに求められる「徹底議論」と「ワクワク」は、どこから生まれるのだろうか?
「プログラミングは、やらされる「お仕事」でよいのか?」という疑問にもつながってくる。
また、「評価の物差しが少ない」のなら、答案作成技術といった評価の物差し以外の、他の物差しに測られるための価値や能力を、人はどのようにして手にし、どのような形でアウトプットし、可視化し、社会から評価されるのだろうか?

根本的な疑問を共有することができた。

三津田治夫