本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

教養としての「文学」のすすめ

f:id:tech-dialoge:20190617140507j:plain

7月3日(水)には勉強会「AI導入は出版業界を救うか?」を開催する。
5月10日のブログエントリーで書いたとおり、
登壇者の二人であるITエンジニアの三井さんと文学YouTuberベルさんとで、
事前MTGを実施した。
このときの議事録を読みながら、
本を巡った談話の勢いを反芻するように思い出していた。

書評とは本来読むもの。
しかしそれを動画に昇華したところが、ベルさんの独自性である。
読者として彼女は本への熱い愛を伝えながら、現代文学を中心に新刊の紹介に力を注いでいる。
7月3日(水)の「AI導入は出版業界を救うか?」に登壇される。
本好きのITエンジニア、もちろんノンエンジニアも、ぜひご来場いただきたい。

【7/3(水)開催】 出版を元気にする勉強会プロジェクト:「AI導入は出版業界を救うか?」
https://tech-dialoge.doorkeeper.jp/events/91523

今回は、私が「ITエンジニアにこそたくさん本を読んでもらいたい」という願いを、
たえずブログやSNSで伝えている意味を、以下でお伝えしたい。

ITエンジニアには、多様性を受け容れるマインドが必要となる。
それは、顧客が抱える多様な課題を解決するためである。
マインド形成のために、文学や哲学、歴史の本を読む。
それが最強のエクササイズになる。
近年はITエンジニアにも理研文系を問わない「教養」が求められているのも、
ここに理由がある。

言い換えると、教養は、顧客課題の多様性をキャッチするための傾聴力である。
ITエンジニアが技術的な知識を持つことは言うまでもない。
そのうえに、深い教養を身につけることで、
顧客に価値の高いサービスを提供することができる。

では、教養とはなにか?
それは、その人が持つ情報や興味、好奇心の範囲と、
その人の人間性が混ざり合ったもの。
そして、その人の知識と好奇心、人格が三位一体となったものである。
教養は、決してテストで採点できるものではない
(「教養検定」なる資格試験も出てきそうだが……)。
数値化はほぼ無理である。
暗記した知識やキーワードの数で示すことができないのが、教養である。

では、この教養の入り口に立つために最適な手段はなにか。
それは、本であり、文学である。
本は、作品として人の手で編まれている。
作家が構成を練り上げ、書き上げ、編集制作が査読し、作りこむ。
これは、本づくりの伝統的なスタイルだ。
メディアが紙であれ電子であれ、このプロセスを経て作りこまれた
アウトプットは強い。
そして、情報量が圧倒的に多い。
Webだけで教養を得ることはできない。
その理由が、ここにある。

哲学や歴史など、教養を手に入れるための本のジャンルは大量にある。
その中で、最も入りやすいのは、文学である。
なぜなら、読むことに専門性は不要だから。
さらに、さまざまな読者に読まれることが想定される。
それが、文学である。
もちろん、文学の幅は実に広い。
読者を選ぶ文学作品も山のように存在する。

書店で平積みされている作品でもよい。
また、文学YouTuberベルさんが紹介されている作品でもよい。
自分の感性に響いた文学作品を見つけ、手にとり、読んでいただきたい。
そこから、古典文学に向かったり、哲学や歴史に向かったり、
自分の方向性を定めればよい。

文学にはさまざまなものが含まれている。
愛や憎しみ、喜びや苦しみ、死や感謝、など。
人間そのものや、人間を取り巻く神羅万象を文字にし、
再構築を試みる。
そうした言葉の芸術が、文学である。

ITエンジニアにこそ、ぜひ、文学を通して、
人間の本質に触れてもらいたい。
人間の本質に触れたというフィルターを通して、
サービスを開発・提供していただきたい。
そこからさまざまなジャンルの本に広がり、
教養をさらに磨いていただきたい。
そうした挑戦の先には必ず、成長があり、未来がある。

7月3日の勉強会「AI導入は出版業界を救うか?」が、
そのきっかけになってくれることを心の底から期待している。

三津田治夫

 

当ブログ運営会社

f:id:tech-dialoge:20190320130854j:plain