本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

本と音楽のマリアージュ「ピアニスト髙橋望による ブックトークと音楽」を開催

2024年2月23日(金)天皇誕生日クラシック音楽に親しむ会本とITを研究する会株式会社ツークンフト・ワークスの共催で、「ピアニスト髙橋望による ブックトークと音楽」を都内B-tech Japanで開催した。
満員御礼、あっという間の2時間だった。

今回取り上げられた書籍と演奏された楽曲は、以下の通り。

◎書籍
豊饒の海 春の雪』(三島由紀夫著、新潮文庫
『雪国』(川端康成著、新潮文庫
クライスレリアーナ』(E.T.A.ホフマン著、国書刊行会
『砂男』(E.T.A.ホフマン著、光文社古典新訳文庫
『水の精』(フケー著、光文社古典新訳文庫
『音楽見聞録 フランス・イタリア編』(C・バーニー著、春秋社)

◎楽曲
子供の情景』(シューマン作曲)より「見知らぬ人々と国々について」
『楽興の時』(シューベルト作曲)より「第2番」
ノクターン第17番』(ショパン作曲)より「終結部」
トロイメライ』(シューマン作曲)
クライスレリアーナ』(シューマン作曲)より「第1曲」
『ホフマンの舟歌』(オッフェンバック作曲)

オーストリアの名器ベーゼンドルファーの響きとブックトークの言葉に耳を傾ける、他では味わえない貴重な時間を共有した。

演奏を挟み、書籍にまつわるトークを行うピアニストの髙橋望氏。
書評だけでなく、髙橋氏の音楽に対する取り組みが印象的だった。
楽譜から音を紡ぎ出し、奏で、観客にアウトプットするという、アーティストとしての試行錯誤や、その難しさ、そのときの心身の状態が、本を通して語られる言葉から伝わってきた。

最後に、18世紀イギリスのオルガン演奏家音楽史家、チャールズ・バーニーによる『音楽見聞録 フランス・イタリア編』が取り上げられた。
音楽をテーマに生き生きと描かれた旅日記を紹介する髙橋望氏。
ヨーロッパを歴訪、フィールドワークを展開し、その内容を見聞録としてまとめた作品。
イタリアでは父レオポルトと14歳のモーツァルトと出会ったり、ドイツでは大バッハの息子のC.P.E.バッハと交流したり、フランスではルソーやヴォルテールと面会している。
会場では本作に対する声が多く、上下巻併せて16,000円を超える高額書がこの場で5セットも売れるという現象が起こった。音楽の力が、本の言葉をより深く読者に届けた結果であろう。

楽譜も書籍も本である。双方、音符と文字という記号で記述されている。楽譜を読み取り、解釈し、音楽としてアウトプットするプロのアーティストが語る、文字から読み取った言葉は、あたかも音楽のように響き、非常に印象深かった。

三津田治夫