ブックレビュー
昨今の課題であるパレスチナ問題を深く知ろうということで、今年最後の読書会のテーマとして取り上げられた作品。十字軍とパレスチナ問題の大きな違いは、やる側がバチカンかアメリカかという点。しかしやられる側はつねにアラブ人である。 歴史とは常に勝者…
ハンナ・アーレント(1906~1975年)と聞くと、全体主義批判の社会学者、ハイデッガーの元カノだったというイメージが先行するが、実際、本作『人間の条件』(1958年)とはどういった作品なのだろうか。先入観を排除して頭をクリアにし、独自解釈を施してみ…
COVID19による人間の移動の制約でグローバル物流が分断され、世界の物の動きが停滞した。物不足、世界インフレが発生。さらには戦争が追い打ちをかけ、状況を複雑化させている。この問題を起点に、本作の論旨が展開される。 パンデミック終息後もいまだ世界…
今回の課題図書は、2度目に取り上げることになったオーストリアの作家、シュテファン・ツヴァイク(1881~1942年)の自伝、『昨日の世界』(1942年)であった(ちなみに前回は『人類の星の時間』)。 定例読書会の課題図書として私が初めて選書した作品で、…
『ゼロから理解するITテクノロジー図鑑』 の、中国語簡体字版の見本がプレジデント社から到着いたしました。 コンパクトに美しくまとまっており、各国の編集者や読者の嗜好の違いを知るとともに、率直に、感動しました。 これにて、日本語原版にあわせ、韓国…
歴史とはなんだろうか?歴史とは、過去に記述された文献や、人類が作り上げた物体の蓄積である。そして歴史学とは、これらを採集・解釈・再構成し、いまに生きる私たちの知恵として役立てるための学問である。また、歴史にはエンタテイメントの要素もある。…
シュテファン・ツヴァイク(1881~1942年)の自伝、『昨日の世界』を読み終えた。定例読書会の課題図書として、私が初めて選書した作品。選書しておいて、647ページの大作を手にして一瞬面くらったが、私にとって非常に興味深い内容で、一気に読むことができ…
森鴎外と聞くと、あまりにも古い作家だったり、国語の教科書を思い出したりなどと、なんだか遠い、お勉強の世界にある作家だというイメージを持つ人が少なくないかもしれない。 今回取り上げる『舞姫・阿部一族』は、明治(とはいえ生まれは幕末)の文豪、森…
これはおもしろい。大作ファンタジー。エンデの世界観は壮大で好感が持てる。作品の使命とは、世界の可視化である。しかもエンデの場合は児童文学という領域で、大人が作り上げている世界を可視化している。 『モモ』が経済学の物語であるとしたら、『はてし…
ウィーン世紀末文学の大御所、アルトゥール・シュニッツラーの最晩年の小説を読んだ。 この方の名前は知らずにも、スタンリー・キューブリックの映画「アイズ・ワイド・シャット」(『夢小説』)の原作者であるといえば、すぐにわかるだろう。 そして『女の…
大変興味深く拝読した。30年前に読んでおいたら、いまの世界の見方が大きく変わっただろう。「なんでいままでハプスブルク帝国を知ろうとしなかったのだ!」と、長年のもやもやが解かれた印象が、今回の読後感だった。 東欧の本質はソビエトではなくハプスブ…
1088ページという長尺でありながらも、作品を通して人間パゾリーニに迫るという一貫した視点がブレない名作。 パゾリーニという名前を聞いただけでも、「ちょっとなぁ……」となる人は少なくない。エロ、グロ、汚い……、という単語でひとくくりに片づけられるこ…
科学といえば森羅万象を仮説検証し再現性のある結果を得る学問で、哲学といえば人間が感知したことを言語化して検討、共有する学問。歴史学といえば過去に起こった事柄を文献や遺物で比較検証、解釈する学問。では、今回取り上げる「陽明学」とは、どんな学…
登校支援型フリースクール「にじLabo」に、当方から『MQL4プログラミング入門』と『ゼロから理解するITテクノロジー図鑑』を献本させていただきました。同校の「孤立してしまった子どもたちの“自律”に向けたお手伝い」というメインテーマに共鳴しました。代…
第39回を迎えた読書会、現代ウクライナ文学の名作『巨匠とマルガリータ』(ミハイル・ブルガーコフ著)を取り上げた。 2月からのロシア・ウクライナ戦争という時流を鑑み、本作を取り上げることにした。その民族のメンタリティを知るためには文学がいちばん…
『落葉』(高嶋哲夫著)を拝読させていただきました。「パーキンソン病+ネットカルチャー+エンタテイメント+スタートアップ(ビジョンハッカー)」といった、高嶋哲夫さんの鋭い視点から「いま」が切り出されている興味深い作品です。 パーキンソン病とい…
正編が黒、続編が赤という装幀が素晴らしい。マルキ・ド・サドの代表作。怪女ジュリエットの悪徳三昧の半生が描かれるアンチ・ユートピア小説。 正編では大臣に囲われる娼婦としてジュリエットが登場。大臣の権力の庇護下で悪徳の限りをつくす。大臣は慈善施…
「地政学」という言葉に皆さんはどのような印象を持つだろうか。「学」と言われながらも大学で正式に学問されていない分野である。日本では太平洋戦争敗戦後、国土侵略の思想原理であるとしてマッカーサーにより禁止されていた、など。 今回は、2月に勃発し…
当社プロデュースの以下書籍、『DXビジネスモデル』に次ぐ2冊目の重版が決まりました。 発刊後4日での重版決定という、異例の速さでした。 www.amazon.co.jp お支えいただいた読者並びに著者様、TMの会の方々、版元ご担当・関係者、書店・取次様など、全関係…
サイト「経営者テラス」に、当方が運営する株式会社ツークンフト・ワークスがプロデュースを担当させていただいた『DXビジネスモデル』(小野塚征志著)の以下紹介記事を寄稿させていただきました。keieishaterrace.jp 本作の編集制作時つねに念頭に置いてい…
小野塚征志さん著、当方プロデュースの新刊『DXビジネスモデル』、見本が上がってまいりました。 また、カテゴリ・ダブル1位に上がってまいりました! カバーも印刷も美しく、優しい仕上がりです。書店ではぜひお手に取ってごらんください。5月19日発売です…
第37回を迎え、もはや歴史的な会となった飯田橋読書会。今回は新規のHHさんとTTさんが加わり、レギュラーメンバーのKMさん、MMさん、HNさん、AAさん、SMさん、KNさん、SKさん、KHさん、私を含め、総勢11名の過去最高の大人数となった。こういうときにZOOMと…
先日知り合いの誘いで、渋沢栄一(1840~1931年)をテーマにした読書会に参加する機会を得た。これを機に、いろいろと調べ、考えた。 渋沢栄一の名前から私が第一に思い出すのは、作家、澁澤龍彦である。彼は渋沢栄一のいとこのひ孫にあたる、文学の翻訳や欧…
オビにあるマリオ・バルガス・リョサの賛辞の通り、心に残る、忘れがたい作品だった。 この本のテーマは、「ナチス」と「プラハ」。 金髪の野獣と言われたナチス親衛隊のナンバー・ツーでユダヤ人大虐殺の首謀者、ラインハルト・ハイドリッヒと、それを追う…
カフカの長編には『審判』のほかに『城』と『失踪者』があるが、その中でも最も暗く、恐ろしい作品だ。カフカの作風に一貫したものは、「なんでこうなったのかわからない!」という理不尽さや因果関係のわからなさ、不気味さである。ある意味、いまの「AI」…
2014年1月に第1回目を開催してはや7年。今回で第36回を重ねることになった飯田橋読書会。お題は、たびたび取り上げるジャンルの戯曲。今回は、古代ギリシャの劇作家、ソポクレスの悲劇を取り上げた。 2020年2月5日の第30回読書会『ガリレイの生涯』(ブレヒ…
鳩摩羅什(くまらじゅう)という書名を目にして衝動的に買った一冊。副題にもあるように、この方は日本に法華経をもたらした中国の高僧で、西遊記でおなじみの三蔵法師の一人である。 小説は2つの物語から構成されている。一つは現代。病苦から世をはかなみ…
クライストの書いた喜劇とはどんなものだろう。そんな疑問を持ちながら読んでみた。 さすがクライストだけあって、喜劇とはいえ辛口。割れてしまった甕を巡る裁判を通していろいろな事実が判明し、そこにオチがつく。クライストの作品の中ではわかりやすい世…
『ゼロから理解するITテクノロジー図鑑』の中国語繁体字版の見本が到着いたしました。 監修させていただいた本作が海を越えたことは感無量です。 版型はB5。大きくなりました。フォントは「字型」、ディープウェブは「深網」と訳されています。台湾において…
毎回連続したテーマを取り扱わないことをモットーとした飯田橋読書会。前回の『孔子伝』(白川静著)から変わって、今回は『現代経済学の直観的方法』(長沼伸一郎 著)を取り上げる。世界的に経済が混乱をきたすいまだからこそ、経済学に取り組むことには意…