本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

コラム/エッセイ

考えたこと、気になること、意見、などをまとめました。

7つの執筆マネジメント ~書くという 実務のトリセツ~

仕事柄、本を書く人たちとのつながりは多い。中でも、「初めて本を書く」という人たちも少なくない。初めて本を書く人たちはさまざまな課題を乗り越え、文章を書き上げ、本を作り上げる。このような人たちと相談を受けながらやり取りするなか、共通の課題を…

書籍の企画書をつくるためのノウハウ④ ~販促編~

企画書というと企画趣旨や概要、対象読者、目次、本の体裁といった、本そのものについて説明される文書であるが、さらにその次の、本をどのように読者に届けるかという道筋としての「販促案」を考え、記述しておくことが重要だ。販促案が考えられているか否…

全建物がアートにより構成。バウハウス旧宅ミュージアム「ハウス・ラーベ」(Haus Rabe)を訪問

かつては「小パリ」と呼ばれたドイツの音楽や文芸の街、ライプツィッヒ(Leipzig)から交通機関で1時間ほど南下すると、小さな町ツヴェンカウ(Zwenkau)がある。ツヴェンカウの36年来の友人コリンナの旧宅で現ミュージアム「ハウスラーベ」(Haus Rabe)に…

自分にとっていちばん大切なものはなにか?

8月5日、株価の大暴落という大ニュースが世間を騒がせた。1987年の10月に起きたブラックマンデー以来の下げ幅である。日経平均が4万を超えるなどの異様さで下落は目に見えていたものの、この一瞬の下落には私も含めて驚いた人は多い。 そして個人的に最も驚…

いまこそRDBに向き合う期待の新刊:『データ分析に強くなるSQLレシピ』 ~小規模データの前処理・分析の書き方&テクニック~

8月5日、当社で制作をお手伝いさせていただいた新刊『データ分析に強くなるSQLレシピ』 ~小規模データの前処理・分析の書き方&テクニック~が発刊されました。 RDB(リレーショナル・データベース)とSQL(データベースを操作する言語)という、レガシーで…

日本一美しい書籍:『マタイ受難曲』(磯山雅 著、東京書籍刊)

『マタイ受難曲』(磯山雅 著、東京書籍刊)のオリジナルは残念ながら現在絶版。文庫版にフォーマットを変え再刊されている。 このカバー、実は半透明のハトロン紙。これを外すと、光沢表紙へ4色で印刷されたイエス・キリスト像とバッハの楽譜が出てくる。 …

書籍の企画書をつくるためのノウハウ③ ~読者ペルソナ編~

本の企画書づくりにおいて、目次づくりの次によく受ける質問は、「読者ペルソナ」である。ペルソナとはあまり聞かない言葉かもしれないが、本来マーケティングの用語で、ここでは「読者像」のことを指す。ちなみにペルソナとはラテン語起源の言葉で仮面を意…

読書会に参加する効能について ~未知・差異との出会い、感動~

近ごろ、読書や教養というキーワードを目にする機会が増えてきた関係か、「読書会」に関する質問や相談をよく受ける。世の中にあふれる専門用語が急速に増え、いわゆる「価値観の多様化」が、本や教養への関心の高まりの原因であるようだ。ここでは、読書会…

書籍の企画書をつくるためのノウハウ② ~目次づくり編~

「企画書が書けない」の理由にはさまざまなものがある。そこでよく相談を受けるのが「目次が書けない」である。文章が書けるようになっても、目次といった本の構造をつくり上げないことには、書籍を書くことはできない。今回は、前回の書籍の企画書をつくる…

書籍の企画書をつくるためのノウハウ① ~基礎編~

最近「本を書いて出版したい」という相談を受ける機会が増えてきた。ブログやSNSなど、好きに書いたものをデジタルで世に出すことが容易になった昨今、「出版」といったフォーマルな形をとった情報発信の価値が再評価された結果であろう。この相談に私は必ず…

「クイーンと私」【その6】:『無敵艦隊スターフリート』(ブライアン・メイ&フレンズ)

このジャケ写真を見てお気づきの方も多いと思うが、これは1980~1981年にテレビ放映されていた永井豪原作のSF人形劇『Xボンバー』である。当時は「日本版サンダーバード」と喧伝されるほど高度な技術を導入した人形劇だったが、残念ながら視聴する子供たちは…

「クイーンと私」【その5】:『シートキッカーズ』

クイーンのライブ盤というと『ライブ・キラーズ』が有名で、私はリアルタイムでよく聞いていたが、スタジオ録音に技巧を凝らしまくったクイーンの楽曲のライブには、いささか物足りなさを感じていた。そんな矢先、16歳のときに地元の中古レコード屋さんで150…

読みました:『新規事業を必ず生み出す経営』(守屋実 著) ~日本の企業たちに向けた現代の寸鉄詩~

税込14,850円の高額書ながら、重版を重ね売れ続けている名著。守屋さんの既刊『起業は意志が10割』『新しい一歩を踏み出そう!』の論調を軸にし、新規事業や起業に取り組む人にとって価値のある、最新事例と著者の見立てが読める。大企業で発生する「あるある…

「クイーンと私」【その4】:『世界に捧ぐ』

フレディがインド生まれであることは生前から周知の事実だったが、その他過去のことはほぼ語られることがなかった。フレディが生前積極的に語ることがなかった過去が、映画『ボヘミアン・ラプソディ』の中で明らかにされる。「ムスターファ」など、クイーン…

「クイーンと私」【その3】:『クイーン詩集』

クイーンの歌詞は、取りつく島のない、物寂しい、薄暗いものが多い。その対極に「バイシクル・レース」のような純粋な言葉遊びがあったり、クイーンの作り出す詩の世界のコンテキストは奥深く広い。 私が『クイーン詩集』を買った当時(大学生)も、クイーン…

「クイーンと私」【その2】:『戦慄の女王』

デビューアルバム『戦慄の女王』において、すでにクイーンは完成されていた。映画『ボヘミアン・ラプソディ』ではこれ以前の、ブライアン・メイとロジャー・テイラーが結成した「スマイル」の時代から描かれている。スマイルがあのままのバンドだったら、よ…

「クイーンと私」【その1】:『Queen2』

写真の『Queen2』は、15歳のとき(1983年)、私が生まれて初めて購入した輸入盤LPレコード。当時国内版LPというと2600円したが、輸入盤だと1700円で買えたので、葛飾の自宅からお茶の水まで電車賃節約のため自転車をこいで『Queen2』を買いに行ったものだ。 …

『リチャード三世』を読みました ~イングランド・シェイクスピア・デスメタルの深い関係~

10月に亡くなった友人の元Toransgressor(トランスグレッサー)Bass、キクちゃんが住んでいたストラトフォード・アポン・エイヴォンの作家、シェイクスピア『リチャード三世』を読んでいた。 シェイクスピアの悲劇といえば『ハムレット』や『マクベス』『リ…

副業から生まれる新「資本」主義

90年代の日本企業では、経営者が従業員に対して「経営者意識を持って仕事に臨め」「つねに強い危機感を持て」と檄を飛ばしている場面がしばしば見られた。 実際に企業で従業員が経営者意識を持ってしまったら大変なことになる。従業員が役員をクビにしたり、…

人間がクリエイトする意味はどこのあるのか?

ChatGPTというAIが登場することにより、人間のやるべきことが人間の鏡としてのAIに映し出されてきたことは、前回に書いた。 人間とAIの違いがわからなくなってきたのだ。ChatGPTは人間のような振る舞いで人間に似た答えを出してくる。それは当たり前である。…

ChatGPTは人類を超えるか?

ChatGPTが巷で大流行だ。一時の過熱ぶりからは落ち着いてきたとはいえ、この言葉を聞かない日はない。イーロン・マスクなどシリコンバレー系の識者が意味ありげな発言をしたり、新バージョンに対する期待感、ビジネスの根底を書き換えるのではないかという不…

昭和の教育とは、いったいなんだったのだろうか。

近ごろは世の中が多様化し、教育の世界でも多様化に対応するべく、STEAM(Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学))という言葉が使われ出している。 無意識に多様化という言葉を使ってしまったが、本…

小さな創造と集合知。これらが動き出し、イノベーションのタネを生む

日本が年々国際競争力を失う中、たびたび「イノベーション」という言葉が引き合いに出される。 先日とあるセミナーに参加し、印象深い公式をお見せいただいた。それは クリエイション × オペレーション = イノベーション である。いまの日本人は、アイデア…

創業6年目で考えた本と「本」のこと

私が経営する株式会社ツークンフト・ワークスは、1月11日をもって創業6年目に突入した。出版プロデュース事業を起業して丸5年を経て、従業員時代には体験したことのないさまざまな風景を見ることができた。道半ばとはいえ、ここまで来ることができたのは、ひ…

組織と自律、思考停止を考える

DXという単語に伴い、近ごろはリスキリングという言葉もよく耳にする。企業がいままでの組織人を、変化の激しい世の中に対応できる新しい組織人へと教育する。これが、リスキリングと呼ばれている。 DXもリスキリングも、とくに日本の大企業においては、成功…

「複雑」とはなにか?

2021年7月刊の『DXスタートアップ革命』のプロデュースを手掛けた際には「DXという言葉は年内には旬でなくなる」と言われて一年を経たが、今年5月に刊行された『DXビジネスモデル』は3刷となり、発売後4か月で累計1万部を超えた。「DX」というキーワードへの…

Web3書籍回収の悲報から見た「情報を取りに行く」ということ

先日、Web3を扱った書籍が版元により回収されたという出版事故がネットを騒がせた。IT書籍の老舗版元での出来事であり、同業という意味でもまったくの他人事ではない。この話には愕然としてしまった。同時に、身を引き締める思いである。サイトには誤記個所…

編集者、その愛すべき人種たちの未来

本づくりに携わる「編集者」という言葉の意味は、時代とともに大きく変わってきている。そのことを最近強く感じるようになってきた。明治の文豪幸田露伴を支えた小林勇は、作家の黒子として創作に寄り添い、作家の臨終にまで立ち会った編集者だった。昭和の…

日本が第1位を獲得。観光魅了度ランキングが意味する、コンテンツの力

先日、世界経済フォーラムが発表した世界の観光魅了度ランキングで、日本が初の第1位を獲得した。これは素晴らしいと思いつつ報道を聞いていた。そして、昨年の第1位はスペイン(今年は第3位)だという。何百年も前の世界大国であったスペインがいまは観光小…

『DXビジネスモデル』の紹介記事を寄稿させていただきました

サイト「経営者テラス」に、当方が運営する株式会社ツークンフト・ワークスがプロデュースを担当させていただいた『DXビジネスモデル』(小野塚征志著)の以下紹介記事を寄稿させていただきました。keieishaterrace.jp 本作の編集制作時つねに念頭に置いてい…