本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

セミナーレポート:12月11日(月)開催「現役編集者による 人に伝わるライティング入門」

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今回からテーマと参加人数を限定したセミナーを、分科会として開催することにした。その第1回目としてとり上げたのが、ライティングセミナーの2回目「人に伝わるライティング入門」である。秋葉原のビリーブロード株式会社にて開催した。 

前回と同じタイトルながら、今回はサブテーマとして「ブランディング」を設定した。対象もリーダーやマネージャーに絞って内容を更新した。その2時間の模様をお届けする。

前半はコンテンツ作りの概論と、後半はライティング概論やライティングによるブランド確立の方法を学んだ。今回はとくに質問が興味深く、またペアワークにも時間を費やした。ペアワークでは、作成した企画案や見出し案をお互いに見せ合って意見交換するという、日常で編集者が筆者たちと行っている作業を体験してもらった。

参加者からの質問の質が高く、教える側の私としても学ぶことが多かった。
とくに印象的だった質問を、以下9つ、FAQふうにまとめてみた。
ご参考になれば幸いである。

●質問①:
企画案などを作った際、他人の意見を聞き、受け入れるには勇気がいる。また、SNSでレビューアーを募るにもフォローワーがいない。どうしたらよいか?

●回答①:
ここが最もライティングやコンテンツ作りの苦しいところかもしれません。意見を言いあいやすいパートナーシップを普段から意識して作っていき、SNSなら今後の関係性を織り込んでフォローワーを少しずつ増やしていきましょう。こうしたセミナーや勉強会で知り合った仲間同士で文章修行をするのも一策です。


●質問②:
書きたいことが2つあった場合、それは1つに絞るべきか。それとも2つ書いた方がよいのか?

●回答②:
書きたいことを「書きたいテーマ」と解釈してよいのなら、それは1つに絞り込みましょう。自分で、「書きたいことが2つある」と思っていても、実はテーマは1つだった、ということもあります。第一に、自分が手がけているテーマはなんなのかを、一段上から俯瞰的に見る癖をつけてください。


●質問③:文章や文字の校閲テクニックはどうやって磨けばよいのか?

●回答③:

専門学校に行ったり、日本エディタースクールの『標準 校正必携』など書籍を使った座学もありますが、実地のトレーニングがいちばんです。Webから未編集の文章を取ってきたり、仲間から未編集の文章を受け取って校閲のトレーニングをさせてもらうのも有効です。ともかく、実地で数をこなすことです。


●質問④:今回、書くことでブランディングを行うというテーマだったが、このセミナーにおける「ブランディング」の定義を教えてもらいたい。

●回答④:

「書くことで自分の“いい部分”を“正しく”相手に伝える」を「ブランディング」と定義しています。そのためには己を知る必要があります。そこで自問自答を繰り返し、自分はなにを書きたいのかを徹底追求する、というワークを前半で行いました。その上で受け手の欲求を知り、それが正しく相手に伝わるよう、適切な書き方や適切なメディアの使い方を学んでいただきました。

適切な行動を繰り返しアウトプットすることがブランディングの基礎です。私はよく著者さんに、「ブランドを作りたいのなら、好きな服を着てはいけません。“似合う服”を着てください」とお伝えしています。


●質問⑤:「1ページに1、2カ所は見出しを入れましょう」と学んだが、この「1ページ」とは具体的になにを指すのか?

●回答⑤:

ここでは、A4版の紙1枚、ノートPCの1画面を「1ページ」としてます。ただし、これは実用的な文章を書くための基本セオリーで、小説やWebのランディングページの場合など、状況によって見出しの数や質が大きく異なってきます。


●質問⑥:自分は60代だが、文章を読んでもらいたいターゲットは20~30代。この世代に文体などを合わせて書く必要はあるのか? そうであれば、具体的にどうしたらよいのか?

●回答⑥:

光文社文庫の2006年の新訳、ドストエフスキー作『カラマーゾフの兄弟』で100万部を突破しました。ロシア文学として異例の大ベストセラーをなしとげた翻訳者の亀山郁夫さんは、外国文学者の間に流通している日本語ではなく、「読者の言葉」を持っていたゆえに、ベストセラー化を実現できた、ともいわれています。

文章の主人公は読み手なので、読み手の言葉、つまり読み手の言語空間を知り、共有することが大切です。具体的にそれをどう習得するかは、いろいろな世代や属性の人の文をたくさん読み、書き、意見を聞き、文章修行を続けることです。


●質問⑦:文章の構造とは「起承転結」が基本なのか?

●回答⑦:

「起承転結」が基本とは限りません。世阿弥が『風姿花伝』で伝えた「序破急」とういう物語の流れもありますし、実用書では「起承結」や「起結」、また小説では「起承転」というものまであります。

本来文章には明確なフォーマットがなく、さらに最近では文体が欧米化しており「情報・裏付け・主張」といった文章構造を持つものも増えてきています。今後ますますこの傾向が増えるはずです。いろいろな文章構造がありますので、まずは自分で納得のできる、自分のライティングスタイルを、書く内容に合わせて見つけていくことをおすすめします。


●質問⑧:書くモチベーションは、どうやって高めたらよいのか?

●回答⑧:

友人や仲間と共著でコンテンツを作る、編集者などのプロと組む、などの方法が考えられます。仲間でやれば励まし合ったり競い合ったりと、行動のモチベーションは高まります。プロと組めば、編集者はマラソンでいう伴奏者ですので、進行管理やリソース管理はお任せできます。一人でやる場合は徹底的にリラックスした環境の中に入り、「自分はなぜ書くのか」と、自問自答を繰り返すことです。書くモチベーションを高めるために一人で合宿することもおすすめです。


●質問⑨:好きな作家の文体に影響され、似てしまう。

●回答⑨:

これはよいことです。文章修行の一つに「写経」があります。文豪や人気作家の文章をひたすら手で書き写すのです。とくに、作家志望の方がよくされています。言い換えればこれは、一つの作品としてのスタイルを身に沁みるまで模倣する作業です。そしてここで受け取った型を、崩すのです。そこに、その人の文体が現れます。その表れが、作品としてのオリジナリティです。

一口に型を崩すと言っても並大抵のものではなく、ここでも、自問自答が重要です。自分はどんな人間で、どんなものをどう書きたいのか。自分の人生の物語は一体どんな言葉になるのだろうか。などの、人生の総ざらいからはじめる必要があります。自分の文体を持つために自己内部を掘り下げる。ここにたどり着きます。

自分がなんのために生きているのかという価値を見いだすことが、自分の文体を持つことにつながります。自分が生きていることには、必ず価値があります。そうした自問自答が上手くできていないから、日本には自殺者が多いのではないでしょうか。政治家やリーダー、メディアなどが発するネガティブワードが多いのも、日本人の自信のなさの表れです。書くために、自信を持って、自問自答を繰り返してください。

三津田治夫