「企画書が書けない」の理由にはさまざまなものがある。
そこでよく相談を受けるのが「目次が書けない」である。
文章が書けるようになっても、目次といった本の構造をつくり上げないことには、書籍を書くことはできない。
今回は、前回の書籍の企画書をつくるためのノウハウ① ~基礎編~ - 本とITを研究するに引き続き、目次のつくり方を解説する。
目次は書籍の構造である
まず、目次とはなんだろうか?
目次とは、本の構造を表現する図面である。
芸術作品のように、天から降ってきたものを書きあげ発表される書籍もある。
が、ほとんどの書籍は、読み手を意識した構造をなして書かれている。
たとえば、本には、本体がある。
本は、紙の束がページとして束ねられている。
そこを開くと、文章が構造をなしていることがわかる。
一見つらつらと書かれているような本でも、実は、以下のような入れ子構造をなして書かれている。
・章
・節
・項
・目
実は私も、雑誌の新人編集者時代、これを知らずに原稿整理していたことを告白する。
とくに書籍のように、多数のページがあるものに関しては、この構造が、書籍を支える重要な役割を担う。
以下、一つ一つ、説明する。
・章(しょう)
「第1章」などの、書籍を構成する最大の枠である。
書籍の中にはたくさんの章が並んでいる。
この上位ランクに「部」というものもあるが、今回は割愛する。
・節(せつ)
章の下位階層には「せつ」がある。
これをフシと読んでしまう人いるので、注意が必要だ。
章の中に節が入れ子として複数入っている。
・項(こう)
節の下には、「こう」がある。
「第1章1節1項」という感じで、3階層目にあたる。
たいていの書籍はここで終わりだが、最下位層として、次の「目」もある。
・目(もく)
項目という言葉にもあるように、小さな文章単位を表すものだ。
「第1章1節1項1目」という感じで、4階層目にあたる。
このように深い階層に位置するものなので、目を設けない書籍は多い。
書籍には上記のように、章・節・項・目という4つの階層があることがわかった。
実際に手元にある書籍の目次を見てほしい。
確かにこういった構造で目次が構成されていることがわかる。
これらに付与されたタイトルが「見出し」である。
おのおのは、章見出し、節見出し、項見出し、目見出し、と呼ばれる。
目次を作ってみよう ~読者を「一般」から「特殊」へと誘導~
では次に、実際に目次を作ってみることにする。
たとえば、本のテーマを「チューリップ栽培について」にしてみる。
この場合、次のようになる。
まずは簡素に4章構成で、章から考えてみる。
第1章 チューリップについて(基礎の基礎)
第2章 栽培入門(導入部)
第3章 栽培実践編(実際のノウハウ伝授)
第4章 応用編(少しハイレベルな話)
上記のように、本は、抽象的な大概念から具象的な各題材を取り上げる。
これにより「みんなが知っている話」や「分かりやすい話」から、「専門性の高い話」「少しハイレベルな話」へと読者を誘導していく。
小説にせよ戯曲にせよ、最初は登場人物の紹介や日常的な情景描写だったりするが、ある事件をきっかけに登場人物の人格や人間関係が豹変したり、消滅したりなど、特殊な変化が起こる。
つまり本の構成は、「一般」から「特殊」へと流れていくように作られているのだ。
章の中身を説明するものが「節」である
章の下位概念には節があるとはすでに述べた。
この例ではどのようなものが見出しとなるのだろうか。
たとえば、以下にようになる。
第1章 チューリップについて(基礎の基礎)
節1-1 チューリップとは? その歴史
節1-2 チューリップの種類
節1-3 チューリップあれこれ豆知識
第2章 栽培入門(導入部)
節2-1 チューリップを育てよう(モノと知識の準備)
節2-2 季節で起こるイベントを知る
節2-3 肥料や栽培材料の知識
第3章 栽培実践編(実際のノウハウ伝授)
節3-1 庭に植えてみる
節3-2 美しく育てる方法
節3-3 植え替えなどメンテナンス
第4章 応用編(少し難しい話)
節4-1 希少品種を手に入れ栽培する方法
節4-2 球根を増やしネットで販売する方法
節4-3 新種を作る方法
こうした基本構造において、さらに内容は細分化、専門化され、もしくはさまざまなトピックやコラムなどがさしはさまれ、「読者がページを閉じてしまわないような工夫」が凝らされる。
たとえば前述の小説や戯曲でもまったく同じだ。
読者が飽きそうなころになると新しい登場人物が出てきたり、事件や恋愛、死が訪れたり、暗転後に牧歌的な描写が現れたりなどがそれだ。
つまり、チューリップ栽培のノウハウ書から、シェイクスピアやチェーホフの戯曲、ドストエフスキーや大江健三郎の小説まで、根っこの部分は「本」という意味でまったく同じ構造と役割が機能している。
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上記駆け足で、目次づくりの基礎を解説したが、なんとなくイメージは掴めただろうか。
自分の中から出た言葉には必ず意味がある。
そうした言葉を伝える重要な技術が、目次づくりである。
その言葉に、人になにかを伝え、人を幸福にしたいという意思が少しでもあれば、それは社会貢献につながる。
上記を参考に、一人でも多くの人に、本で、自分の中から出た言葉を社会に届けてもらいたい。