これはおもしろい。大作ファンタジー。
エンデの世界観は壮大で好感が持てる。
作品の使命とは、世界の可視化である。
しかもエンデの場合は児童文学という領域で、大人が作り上げている世界を可視化している。
『モモ』が経済学の物語であるとしたら、『はてしない物語』は政治の物語であるかもしれない。
主人公のバスチアンが権力に目覚めるあたりからの話が重い。
それにしても子供が本の世界に入り込んだり、その中でさらに物語を書き上げたり、魔女に籠絡されてダークサイドの世界に引き入れられたりなど、純粋に楽しめるシーンが随所にある。子供時代にこの本に巡り会っていたら人生変わっていただろうとたびたび考える。
旅や冒険、友情を通した人間成長といった、ドイツ文学には外せないセットもしっかり含まれている。
世代を超えて読むことをお勧めする小説である。
三津田治夫