本とITを研究する

「本とITを研究する会」のブログです。古今東西の本を読み、勉強会などでの学びを通し、本とITと私たちの未来を考えていきます。

人をつなげる読書会と、人の五感について

最近、人と読書会に関して話をする機会が増えてきた。
そこで、「読書会で人と人がつながる」という意見を聞くことが何度かあった。
なかには、読書会の中で縁結びが生じ、めでたくご結婚、という話も聞いた。

人と人がつながる手段が読書会であることに、どういう意味があるのだろうか。考えてみたい。

機械に依存した他者との関係は、もろい
たとえばインターネットは、人を孤独から解放する手段、人と人とのコミュニケーションを潤滑にし、人間間の分断を解消する夢のテクノロジーとして登場した。

であれば、読書会がなくても、インターネットさえあれば人と人がつながり、人からは孤独という単語がなくなる、ということが言えるかもしれない。

しかしながら、現実は異なる。
インターネットが登場したことで情報が拡散する半面、個人情報の保護はもとより、国家や企業の情報の機密には敏感になり、情報を意図的に囲い込むという、真逆の必要性が生まれてきた。

本来は安全の観点から、情報の囲い込みが起こった。しかししだいに情報の囲い込みは攻撃性も帯びるようになり、結果として人と人とを分断を生み出すネガティブな力になる。

たとえば個人情報に関していえば、当事者の個人情報を隠した依頼人による闇バイトがある。
当事者が依頼される者から個人情報を取得し、個人情報を持つ者(強者)、持たない者(弱者)という非対称性を作り出す。こうした人間間の分断を利用した、犯罪の手口である。

国家や企業においては、国家や企業間での情報や人間の流動性が低くなる。国家では情報操作で人種闘争に拍車をかけたり、企業では技術や貨幣の動きが鈍ることで経済が停滞する。

インターネットによる情報流通は、人為的にコンピュータで操作されたうえで、情報が出したり止めたりとされる。
つまり、インターネットで人を孤独から解放したり、人を孤独にしたりは、人為的に簡単にできるのである。
いい換えると、インターネットを操作する者の手により、人をつなげたり分断したりが容易なのだ。

元も子もない言い方をすれば、インターネットによる人間同士のつながりは、コンピュータという機械に依存した、もろい関係にすぎないのだ。

話を読書会に戻す。
人と人がつながる手段が読書会であることに、どういった意味があるのかは、上記で想像がつくはずだ。

とりわけ、コンピュータやインターネットといった情報のやり取りが社会を覆う昨今においては、相対的に、アナログでの情報のやり取りの価値が上がる。
人間は、相対的な差異を好む生き物である。
20代の若者が、生まれる前に生産されたレトロな車に憧れたり、古民家に住んだり、農業や漁業といったアナログな仕事に就いたりすることに似ている。

デジタルで全五感の再現は不可能
そもそも人間には五感という、5つの感覚がある。
コンピュータとインターネットでおもに扱えるものは、視覚と聴覚という2つの感覚を通した情報である。
実際、人間には加えて、嗅覚と触覚、味覚という3つの感覚がある。
さらに、コンピュータとインターネットが扱える視覚と聴覚の情報量は、デジタルで間引かれており、相当に粗い。

人間が全身で受信している五感のすべてをコンピュータで知覚し、データ化し、流通されることはまず無理だし、今後も無理である。

理由は、生命が持ちうる五感のすべてを、センサーを使ってコンピュータでセンシングすることは不可能だからだ。

さらに、コンピュータはいまのところゼロと一の情報しか持つことができず、その中間やそれを超えたあいまいな情報を持つことができない。

これだけ粗いデジタルとコンピュータの技術をもって、アナログを代替することは不可能だ。

つまり、アナログが持つ情報の量は膨大なのだ。

五感をフルに動かすことで、人と人がつながる
読書会には、オフラインで五感をフル発動させるところに独自の意義がある。さらに言えば、オンラインとオフラインの双方での活動ができる寛容な集まりでもある。

本を読み、語り、聞き、触れ、歓談を共にすることで理解を共有し、文化を共有する。
そして、アナログにしか持ちえない五感という強力な感覚をフルに動かす。人間の五感を通して知覚を更新させ、エネルギーをアウトプットさせることができるのが、オフラインでの読書会の力であり、「読書会で人と人がつながる」の理由であり、読書会ならではの強みである。

本を読み、語ることで、言葉を媒介に五感が鍛えられる。
そして読書会とは、上下関係を構築したり、競ったりする場ではない。人生や仕事を豊かにする場である。

最近は、読書会の手法を用いてチームビルディングをしている企業もあると聞く。
デジタル優位の昨今、企業が新しい価値創出と人財育成を模索する活動の流れである。

人は、つねに変化と差異を求める。

人の心の変化と差異の発見を後押しするツールとしての読書会の導入を、組織の中で考えてみてはいかがだろうか。

三津田治夫